3.我楽多王の軌跡②
「私の父が昔いた街について何か知っていることがあれば聞きたいのですが…。」
「カルナの街で商人してた話は聞いたことありますけど、他はあまり…。」
やはりゼリアさんとほぼ同じだった。
「他に何か知ってることは有りませんか?」
結局、カルナの街でのことしかわからなかった。
「ガラクさんは、何処かへ行ってしまうのですか?」
「はい。父のできなかったことを代わりに私がしなきゃいけないんです。」
「もしかしてカルナの街…に?」
「今のところ、カルナの街以外に情報がないのでとりあえずそこを目的地にしようかと…。」
「ここから東へは、魔物が少ないけど…ガラクさん一人では危険です!魔法使いでもいなきゃ!」
しかし、底辺商人なんかに傭兵としてくる冒険者なんているわけがない。
「私は一人で平気です。3日もあれば隣町に行けるので、隣町の方が大きくて何でもできると思います。」
「いや、私が魔法使いとして同行するわ!」
同行すると言っても彼女は少し魔法が使えるくらいの平凡な女の子。
「大学に行って、ちゃんと勉強をしないと立派な魔法使いにはなれませんよ。この先の旅路、何があるかわからないところにあなたのような人を連れて行って何かあったらいけません。」
「そんな…。」
サラは悲しい顔をする。
「いつか、サラさんが立派な魔法使いになった時は一緒に旅をしましょう。」
そこから、サラは終始俯いていた。
「ガラクくん、もう帰っちゃうの?」
「あまり長時間滞在してでも迷惑でしょう?それにサラさんと話すのが少し気まずいので…。」
「わかった。気をつけてね。」
ベア家を出たのは既に日が落ち始めている頃だった。
帰り際、他に父と仲の良かった商人の方や他の食堂の常連さんなど、聞き回ったが何も成果はなかった。
「結局なんもわかりませんでした。」
と言い、酒を一口飲む。
「そうかい。ガラクくんはこの後はどうするつもりなの?」
「やっぱり、1人で行かない方がいいのかなって思ってきました。」
「もしかして1人で行くつもりだったの!?カルナまで!?」
ゼリアは驚いた顔つきで言う。
「いや、隣町の方が大きいのでそこで傭兵でも雇えればなとは思っていたんですが。」
「1人心当たりがあるよ。暇な戦士。」
「え、俺?」
ゼリアの目線の先にはスネーク食堂常連10年目のルーク・タイガー。31歳でこの街1番の剣豪だ。
「ルークさんは暇じゃないでしょ。剣技の道場をやってたでしょ。」
「いやあ、それがね。俺があまりにもだらしなさ過ぎるとか言って代わりに弟が全部代わってくれちゃってね。俺の仕事無くなっちまったよ。」
ルークがだらしないのは有名だ。掃除は全部人任せでやることやれと言ってやるのが三日後って…。
「ルークさん…ですか……。」
「え!?俺!?そんなに嫌か…。」
「あ、そうだ。」
ゼリアが会話に口を挟む。
「ルークがガラクくんに剣を教えれば一石二鳥じゃないかしら?」
「確かに…。」
これで決まった。
これからの旅、ルークに剣を教えてもらいながら旅をする。
我楽多の上の商人 ショウ @shine___
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