2.我楽多王の軌跡①

まずは父のいた街を知ることから。


とりあえず父と仲良かった人達に手当たり次第に聞いてみることにした。


「ドランさんねぇ…。どうだったかしら…。」

ドランというのは父の名前である。


「何か父が言っていた昔の話とかありますか?」

「一時期ね、ドランさん、うちの店に毎日通っていた時期があったじゃない?」


彼女はゼリア・スネーク。

スネーク食堂を継いだ2代目の店主で看板娘だ。


「ゼリアさんはその時に父と何か話をしましたか?」

「うーん。あっ!カルナの街で商人していた時の話をしていたかしら…」


「カルナの街!?」


カルナの街…というのは此処、商人の街ことハルアラから北にある街で行こうとすると何ヶ月とかかる場所にある街だ。


「他には何かないですかね…?」

「正直、ドランさんとは昔の話とかはしていないからわからないわ。けど、もしかしたらあの人なら知ってるかも。あの…ベアさんの家の娘さん。」


「えと、サラ・ベアさんですか?」


「あ、そうそうサラちゃん。ちょうどドランさんがうちの店に通ってた時、お母さんが忙しいからってサラちゃんをよく預かってたのよ。サラちゃんドランさんとよくお話ししていたから何か知っているかも…。」


「ありがとうございます。では、サラさんのところに行ってきます。」


「そんな急がなくてもいいのに、まあ何かあったらまたおいでね。たまにはうちに飲みに来てもいいんだよ。」


「では今晩、飲みに行きます!」


ゼリアさんに手を振り、次の目的地まで向かう。


サラ・ベアはこの街で最も大きい家に住んでいる15歳の女の子。所謂お嬢様って感じの人だ。



「ここか…」


小さな門を抜けて庭を挟んだところに建物があるはずなのに門の前の時点で建物の大きさが伺える。


「あら、ガラクさん、どうしたのですか?」


話しかけてきたのはサラ・ベア。


「サラさんに少し聞きたいことがあって…。」


「えっ!?あ、では…。入ってください。お茶を飲みながら話しましょう。」

びっくりした様子でサラさんは返事をした。


「わかりました…。お邪魔します…。」



席に着いたのは大きい窓の前の小さいテーブルと椅子が二脚向かい合うように置いてある片方の椅子。

窓からはベア家の大きい農園が見渡せる。


「お茶をお出しするので、少々お待ちください。」


「はい…。」


実はサラさんが5歳くらいの頃、それは父がスネーク食堂に通っていたのと同時期に、仲良くしていた。10年前の話でここ数年はあまり話していないから覚えてくれてて嬉しいくらいだ。


「あれ?ひょっとしてガラクくん?」


話しかけてきたのはサラさんの母親のマリーさんだ。


「大きくなったねえ。ドランさんの件も落ち着いて今はまた商人をしているの?」


「はい。ちょうどやりたいことが見つかったのでそれと同時進行で商人も続けたいと思っています。」


「そうなのね。今日はどうしたの?」


「サラさんに聞きたい話があって…。父のことについて…。」



「サラ、最近ちょっと反抗期というかそんな感じでピリピリしてるけど気にしないでね。何かあれば助けを呼んでね。」

マリーさんは真剣な表情で話す。


「お茶を入れましたよ。あれ、お母さん、ガラクさんと何を話してたの?」

「世間話よ。気にしないで〜。楽しんでいってねガラクくん。じゃあね〜。」


そのままマリーさんは階段を登って何処かへ行ってしまった。


「で、えと、ガラクさんは今日は何の用件でいらっしゃったのですか?」

「私の父の話を聞きにきたのですが、スネーク食堂のゼリアさんに父とサラさんがよく話していたと聞いて…。」

「あ…、そうですか。ドランさんとはよく話しましたね。10年ほど前ですがいくつかは覚えていますよ。」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る