我楽多の上の商人

涼宮ショウジン

1.我楽多だらけの家

私は23歳でしがない商人をしている。

ガラクという名前は我楽多という言葉から付けられたらしい。

父は少年院生まれで16の年から商人をしていた。私は父が25の時に拾った戦争孤児だった。

商人という仕事をしながら男手一つで育ててくれた父にはとても感謝している。

そんな父も2年前に難病に襲われ、3ヶ月に亡くなった。

今はだいぶ心の整理が出来て、普段通り仕事ができる状態になった。


「ああ…」


商人として旅立つ前に実家を片付けようとしていた。

父は商人をしながら色々な小物を集める趣味を持っていて、実家はその小物でいっぱいだった。

私は10歳の頃父になぜ我楽多ばっか集めているのかを聞いたことがある。



「何か一つそのガラクが思う我楽多を取ってこい。」


そう言われ私が手に取ったのは人形だった。

女の子が気にいるような可愛い人形だった。


「これは?」

人形を差し出すと、父は話し始める。


「その人形は、俺がこの街に来る前、下宿させてもらっていた居酒屋の店主の娘さんから貰ったものだよ。」


「なんでお父さんなんかが人形を貰ったの?」


「お父さんなんかって…。へへ。」


また父は色々詳細を教えてくれた。


「俺は3年間下宿させて貰ったいたんだが、店主の娘さんに懐かれちゃって、お別れの時に何かプレゼントをあげるって言われたんだ。そしてその時に貰ったのがこれ。大切なものって言われて渡されたから、いつかこれを持ってまた会いたいんだが、なかなか会えなくてな。」


「だからお父さんは大事そうにこの人形を飾っていたの?」


「そうだぞ。この人形のおかげで今までやってこれたとこもあるくらいだ。小物が手に入る度に何か楽しくなってな、だから今じゃ、家の中全部こんな状態なんだ。」



父が亡くなった時もこの時の会話を思い出した。

この我楽多達は父の人生の一部だったと思う。

捨てるのも勿体無いが…


「そうだ…」

この人形を父が言っていたあの女の子に渡そうか…


思い付いたら居ても立っても居られない。

一度したいと思ったことはやらないと治らない性格なため、やるしかないと思った。


我楽多だらけの家で一つ目標が出来た。

父程の趣味を見つけるわけではないが、なにか楽しいと思える事を見つけたい。



父との会話を思い出す限り、例の居酒屋のある街はこの街からはとても遠いはずだ。

これを機に商人の仕事を再会しよう。



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