第48話 不死身の彼方
「話は終わったかしら?」
「……えっと」
「大丈夫よ。全部知ってるから」
言い
「あんたらしくないわよ、悩むなんて。それに……」
そう言って田所が
「そういうのはすぐに言いなさい。もう家族みたいなもんなんだから、隠し事はなしよ。分かった?」
「…………うん! 分かった! ごめんね!」
有銘が瞳に涙を
それを見て田所が再びワイングラスを傾ける。
「田所さんは知っていたんですか?」
「うん。まあね。ちなみにそこで寝てる奴も知ってると思うわよ」
そう言ってソファーを見る。
「じゃあ、知らなかったのは僕だけだったんですね」
「まあ、そういうことになるわね。彼方君、鈍いんだもん」
「失敬な! 何を言ってるんですか! そんなことないですよ!」
彼方が田所にいつになく強めの口調で言うが、田所はそれに対し深い溜息を吐く。
「じゃあ、そんな彼方君に問題です」
先生よろしく田所が指を差し言う。
「あーめが君のことをどう思ってるか、君には分かりますか?」
その言葉を聞くと同時にずきんという頭の痛みが有銘を襲う。そして、遅れて息が荒くなり全身が
――いつも来るあの症状と同じだ。
彼方の顔を見る。
先程までは感じなかった
有銘はすでにこの症状の根源に気づいていた。
「えっと……仲の良い友達? 後輩? とかですか?」
彼方が冗談を言っている様子は
その様子に田所が再度溜息を吐く。
そして、
「そうですか。じゃあ、彼方君はあーめのことをどう思っていますか?」
幼い子供に
しかし、女性と付き合ったこともなければ、告白もしたことのない彼方にとって、それを面と向かって言葉に出すことは自分の
「そ、それは……」
彼方の顔は
「私は彼方君のことが好きだよ」
有銘がその言葉が彼方に刺さる。
坂田彼方は物心ついた時から独りだった。
そんな生活に何ら不満を感じていない……はずだった。
しかし、それは間違いであった。
今、彼方は独りではない。
田所静江。
笠倉由美。
そして、小波有銘。
彼方に愛する人が出来たのは、大学二年生の春だった。
(了)
不死身の彼方 @yojirosato
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