『働くのって面倒なはずなのに…』

小田舵木

『働くのって面倒なはずなのに…』

 12月22日。私は仕事を納めた。

 私が今使っているアプリでは一社に対して約8万円までしか稼げないからだ。これは社保の加入要件を満たさないようにする為である。

 12月4日から始めたアルバイト生活。最初の方はキツかったが、慣れてくると、日々のルーティーンと化した。私は働くことに対して何を恐れていたと言うのか。

 

 働くのって楽しい…なんて言わない。

 働くのは何時だって面倒くさい。余計な人間関係とか考えるだけでウンザリしてくる。私は今までの職で必ずと言って良いほど、面倒な人間に眼をつけられたものだ。

 一番性質タチが悪かったヤツの事は今でも覚えてる。

 工場で機械をオペレートしていた時の同僚だ。

 彼はオバハンを腐らせたような性格の持ち主であり。異常に粘着質だった。今もあの工場で働いているだろう。

 

 今は12月24日のド早朝。

 私は暖房をつけながら、なんとはなしに文章を書いている。テーマすら定まっていない。

 いやあ。しかし。仕事をしない生活は良いモノだ。昨日は寝て過ごした。

 

 …少し退屈しているのは気のせいか?

 私は仕事は嫌いなはずなのに。仕事がないと一日が締まらない気がしてきたのだ。

 いやいやいや。私は仕事なんて好きじゃない。

 だが、根はオーバーワーカーになるほどのワーカホリックなのである。

 

 ワーカホリックだった頃は。

 タイムカードを切らずに仕事をし、タイムカードを切った後でも働いていた。とどのつまりタダ働きである。今から考えれば信じられない事だが。

 現場仕事をしていた私は。事務仕事に手が回らず。かと言って振る相手もおらず。こっそりと…いや。おおっぴらにサービス残業をぶちかましていた。

 まったく。何をしていたんだが。今なら終業時刻になった瞬間に姿を消す。

 

 私は必死に働くことで。他人とは違う事をアピールしたかったのかも知れない。

 俺はここまで必死に仕事をやっているぞ、と。

 だが。そんなアピールは無駄だった。大体。時間内に仕事が終わらないのは無能の証拠である。

 その上。私はワーカホリック的な働き方を続けていたせいで、うつを発症してしまい。

 今や、やる気のないおっさんである。

 全く。これだから人生はままならない。

 

 ああ。働くのは面倒くさい。

 今は気楽な単発バイトの身の上だが、いずれは。またパートなり正社員なりにならなくてはいけなくて。

 真面目に働かなくてはならないだろう。

 それを考えるだけで憂鬱だ。

 まず、面倒くさいのは人間関係だ。

 うつを発症してしまった私はとかく他人が面倒くさい。元々は客商売をしていた程度に人好きであったが。

 

 働くことはコミュニケーションから始まる。今の単発バイトでもコミュニケーションはあるが、その場限りのモノである。

 長期で働いてしまえば。同僚や上司とのコミュニケーションは避けられない。

 今の私は降り積もっていくタイプのコミュニケーションが面倒くさいを通り越して嫌だ。

 

 昔から。職場の人間とのコミュニケーションには困っていた。

 私は必要のない他人と関わるのが嫌いなのである。

 なんで、気の合わない他人と無理やり関わらなくてはいけないのか?それは仕事だからであるが…いやあ。面倒くさい。話題をひねり出したり、変なイジられ方をするのがハイパー面倒くさい。

 かと言って。終始無言で仕事をするわけにもいかないから。

 頑張って明るい小田くんを演じなければいけない。

 この虚しさよ。何が嬉しくてそこまで奉仕せにゃならんのか。

 

 ああ。こうやってツラツラ書き連ねる程、働く意欲が削がれる。

 同時に、私は今、働かない事で退屈を感じている。

 コイツあ、ジレンマである。

 退屈を取るか、コミュニケーションの面倒臭さを取るか。

 …俄然退屈の方がマシなのであるが。

 カネのない私は働かなくてはならなくて。

 結局、職を得るしかないのだが。ああ。本当に嫌なんだよな。

 

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