第61話『届け、忠臣の唄』





 第六十一話『届け、忠臣の唄』





 異世界生活三十一日目、午前十一時、少し曇ってきた。

 俺は湿地帯の追い込み猟を視察する感じのティータイム。


 レイディは猟の指揮を執る為に現場でお仕事中、尺八ママはダンジョンに戻って第一階層のメンテナンスと拡張作業。


 俺を除くと、この場に居るのはアンドロイドの侍女隊と女性隊員で編成された護衛隊、お嬢様と愉快な仲間達、そしてエルフのアイエとなる。


 椅子に座ってテーブルを囲むのは俺とお嬢様ことザリガニクサとアイエのみ。いや、椅子に腰掛けているのは俺とお嬢様だけだな、アイエは俺に腰掛けている。


 通常、お嬢様の愉快な仲間達『爺・エーコ・ビィナ』の三名は、基本的にお嬢様の背後に控える形だ。しかし、今は爺のセバスニャンが抜けてエーコとビィナの二名しか居ない。


 常にザリガニクサの後に居るセバスは『執事の的確な気遣い』を発揮し、数十分前に「私は護衛隊の手伝いに参ります、ホッホッホ」と、この場を後にし、護衛隊と合流した後は男性隊員を引き連れ周囲の見回りへ向かった。実に出来る執事である。


 すなわち、現在俺の周囲には女性しか居ない。


 そして、俺とアイエは互いの文化理解度を深める為に全裸である。


 全裸で尚且なおかつ直結なのである。


 アイエが微妙に上下運動をしているが、これも緑の民が有する古くからの伝統文化なのである、ウッ。


 全裸のお茶会……これは大軍を率いる司令長官として、また、臣民が敬意を抱き『く在るべし』と思えるような存在として、異文化への偏見やヘイトを無くす為にも必要な行為である、ウゥッ。


 それに、全裸のお茶会でも防犯には十分に気を配り、警戒は解かない。


 先ほど俺が全裸になった時など、一瞬で侍女隊と護衛が素早く円陣を組み、外部からの視界をさえぎった。


 凄い練度だが、少しびっくりした。そして自分達はちゃっかり俺の股間を凝視する隙の無さ、嫌いじゃぁない。


 お嬢様付きのエーコとビィナも良い動きだ。


 ザリガニクサの事をないがしろにしつつ自分の欲望に忠実、上下に揺れて視界をさえぎるザリガニクサのツインドリルを『失礼します』と許可も承諾も了解も得ず高速で頭頂に結い上げる剛腕、二人の連携も鮮やかだ。


 それに、今日の二人は生気に溢れとても輝いて見える。さり気なくザリガニクサの椅子の背もたれのカドに股間を当てこする様は正に凛として痴女、親には持ちたくないが従姉いとこの姉ちゃん辺りだとグッとくる存在だと言えるだろう。俺は好きです。



 そして最後、問題のザリガニクサお嬢様……


 予想通りと言うか狙い通りと言うか、こいつも全裸になった。


 勢いとド根性でアイエに張り合うと思っていたら案の定だ。


 しかし、やはり羞恥が勝るか、全身が紅潮している。その所為せいもあって、ツインドリルを綺麗に結い上げられたその姿が『お風呂上がりの小学生』に見えるのがまた切ない……


 残念だが、見た目が事案過ぎてペニスが反応しない。


 せめてもう少し胸囲が有ればっ、いや、トップとアンダーの差が約8cm有ればAAカップのブラが装着出来る大人のつぼみに至れたものを……っ!!


 絶壁にはブラで覆う出張った岩が無い……っ!!

 ただ小石が二つ有るだけでは駄目なんだよ……っ!!


 しかもこいつは既に成人っ、成長の見込みが薄い……っ!!


 ミルフスキー粒子が仕事していないっ!!

 粒子細胞の活性化が胸だけかたくなに不活性っ!!


 見た目は子供っ、中身も子供っ、性に敏感だが性知識は控えめっ!!


 顔は真っ赤、目はバッテン、両手と両脚はワタワタ、お前はいったい何がしたいんだ……っ!?


 でもまぁ、ダンジョンで留守番中のネイやカーリとは仲良くなれそうかなぁ、とは思う。


 今度ゆっくり遊ばせてみよう。



「ちょ、ちょ、ちょっとアイエさんっ、『殿下椅子』が長いのではなくて? そろそろアテクシと交代して欲しいのだけどっ!!」



 あ、ザリガニクサが痺れを切らしたか。

 しょうがない、キレの無いペニスをブチ込むか……


 と思ったら、エーコとビィナの侍女タッグがザリガニクサの前に立ち塞がった……何だろう、面白そう。



「お待ち下さいませお嬢様っ!!」

「お嬢様の前に私共が『毒見』をっ!!」


「ど、毒見ですの? 毒が有りますの? どこに?」


「アイエ様の股間に刺さったあの『文化交流棒』ですっ!!」

「あの棒の先から毒が出るのですっ、ドピュッっと!!」


「まぁ怖いっ、でもでも、アイエさんは大丈夫ですの? ポンポン痛くない? お股ジンジンしない?」


「ンッ、ンッ、ジンジンッ、しますっ、お腹はっ……イッ……ふぅ」


「イ? 痛い? 痛いんですのねっ!! まぁ怖いっ!! エーコとビィナはお下がりなさいっ、毒消しを買ってからにしましょうっ!!」



 その毒消しは買わんでくれ……



「いいえお嬢様、避妊どくけし薬は不要っ、むしろ毒を消さないでとお願いするレベルで不要っ!!」


「そうですともお嬢様っ、その毒をはらに溜めて初めて毒見と言えましょうっ、お任せ下さいお嬢様っ、必ず妊娠こくふくしてみせますっ!!」


「エーコ、ビィナ、あなた達……うぅぅ、その忠義っ、確かに見届けましたわっ、えぇえぇ宜しくってよ、存分におやりなさいっ……骨は、このザリガニクサ皇太子妃が拾って差し上げますわっ!!」


「お嬢様っ!!」

「いいえ、妃殿下っ!!」


「涙を拭いて二人とも、毒見役が泣いていては、皇太子殿下がビックリしてしまいますわ……さぁ、お行きなさい、どうか、死なないで……」


「お嬢様……見ていて下さいで」

「私達の事、忘れないで下さいね?」


「うぅぅ……早く、行きなさいっ!!」


「うふふ、相変わらず泣き虫さんですねぇ」

「さぁ行きましょうエーコ、私達の未来の為に……っ!!」


「歌いましょうビィナ、忠義の鼻歌を」

「主に贈りましょうエーコ、最期の鼻歌を」



“ルールル、ルルル、ルールル”

“ルルル、ルールールールールー、ブフッ……”



 ……やべぇ、こいつら面白れぇ。


 エーコとビィナはシクシクと泣くザリガニクサを抱きしめ、深くお辞儀をしてこちらに向き直り、全裸になった。


 何で決死の表情で服を脱ぐ必要が?

 って言うかお前ら半笑いじゃん……


 これ以上俺を笑わせないでくれ……っ!!









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俺だけ何か違う つんくん @akatsu

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