第401話 後始末

いつも拙作をお読みいただきありがとうございます。

筆者の俊足亀吉で御座います。


合わせて平素より読者様からの作品への評価、ブックマーク、ギフトを頂きこの場をお借りし感謝申し上げます。


さて、先日のR6年12月22日をもちまして初投稿から無事1年を迎える事となりました。

ここまで支えて頂いた読者様へ改めてお礼申し上げます。


紹介文にもあります通り当初は不定期掲載を見込んでいたのですが、趣味が高じてつらつらと1年間連続投稿に至りました。


相変わらず遅い展開では御座いますが、ようやく本来考えていた主人公の全国行脚の旅が始まります。


完結への道のりが遠い事に変わりは有りませんが、

今後も皆さまからのご評価のもと執筆を続けてまいりますので引き続きご愛読の程、宜しくお願い致します。



では『第401話 後始末』をお楽しみください。



※※※※※※※※※※※※※※※※※



色々と細々した後始末を続けている俺、クルトンです。



コルネンに帰還した翌日から故郷の開拓村に戻る準備を進めている。

2年も貸してもらっていた部屋の大掃除から始まりカサンドラ宝飾工房の作業部屋の契約解除とここも大掃除、狼達の小屋の解体の前準備等々やり出したらキリがない位次々後始末の仕事が押し寄せて来る。


シンシアは正式にセリシャール君の婚約者としての手続きも済んだために、1ヶ月を目途に完全に侯爵邸に引っ越しする予定だ。


なお、ぺスとオベラはシンシアたっての希望で侯爵家で引き取る事になった。

本来ならぺスもポム達から親離れしても良い頃合いだろうし問題無いだろう。


後はリンゴの苗。

これはもう苗と言うには大きくなりすぎた感が有るが侯爵邸の日当たりの良いところにでも植樹してほしい。


ちゃんと手入れをすれば秋には真っ赤なリンゴが収穫できる事だろう。




俺の使用人としてここにやって来た貴族様達も仕事は問題無く熟せる状態になり、郊外で生活するのにも慣れたみたい。


と言うか温泉が有るので離れたがらない。

まあ、それは良しとしよう。



スクエアバイソンのヴェルキーは仕事が無い時は未だに俺に付いてくるくらい懐いていて、この子だけは開拓村に連れて行こうかと思っている。



中途半端だった家畜の買い付けも無事終わり、馬3頭と豚8頭、乳牛2頭、鶏20羽、ロバ4頭と、開拓村の一家庭で所有するにはかなり多い数を仕入れた。


何気にクレスは家畜の世話は好きなので喜んでくれるだろう。

ただ妹たちが嫁いでしまうと世話をする人が減ってしまうから、帰ったら厩舎の設備をもっと充実させて効率化を図るつもりだ。


そして馬2頭とロバ2頭は俺が故郷に向かう時に連れて行くが、残りはカイエンさんにお願いして4、5回程度に分けて連れて来て貰う様にお願いしている。


流石に俺もこの数をいっぺんに連れていけないし、現状では厩舎の大きさも足りない。

早速増築しないとな。



ああ、あと騎士団への挨拶が有ったか。

かなり世話になったからちゃんとお礼は言っておかないと。



「そうか、もうそんなになるか。初めて会った時が昨日の様に感じるな」


まったく、初対面でしかもただの市民に騎士との試合をさせるなんて正気の沙汰では無かったですよ。



コルネン駐屯騎士団の応接室でデデリさんと談笑している。

近く故郷に戻る旨と今までのお礼を伝える為だ。


デデリさん自らお茶を入れてくれて今回は茶菓子まで出してくれる、そんなに気を遣わなくても良いのに。



「こちらこそ改めて礼を言う。

騎士団だけでなく、我がサンフォーム家には特別な配慮をしてくれた。

何か有ったらぜひ頼って来てほしい、騎士ではなくサンフォーム侯爵家として期待に応えよう」


有難う御座います。


この国を長年支えてきた英雄からのこの申し出、正直恐縮するばかりだが無下にするのも大変失礼な事だ。


お言葉に甘えて何かの折には頼らせてもらおう。


「それでですね」

いつも袈裟懸けしているバッグをゴソゴソ漁ると直系20cm位のバックラーとしても小ぶりなそれを取り出しテーブルに乗せる。

このバックラーは手で持つのではなく、腕にベルトで固定するタイプの物。



「ん?バックラーか。それにしても小さいな」


身長2mになろうかと言うデデリさんからすると更にそう感じるんだろう。


「これチェルナー鋼で作っていまして、魔力を通すと防護障壁が展開するようにしてあります」


レイニーさんの為に拵えた楯とは違うコンセプトで作った物。

此方の方はバックラーではある物の、防護の殆どを付与魔法に頼っていて質量が小さい為にシールドバッシュの様な使い方は出来ない。


その分、小型で展開する防護壁も込める魔力の量で変化させる事が出来る。

障壁は透明なのでどの位魔力を込めればどの位の大きさの障壁を展開するのか・・・、と言うのは使いながら体で覚えてもらうしか今のところ無いのだけど、軽さによる取り回し易さや視界を遮らないといった利点もあるから内包魔力がそれなりに多い騎士なら使いやすいんじゃないかな。


某モビルスーツのビームシールドと違って発光しないから、目立って的にされる事も無いだろうし。


「とりあえず試作品ですからね。

色々試して不具合点を確認しながら付与術師と一緒に改良して完成度上げていってください。

あ、コレ設計図と製造試料です」


追加でカバンから準備した資料の束を取り出す。



「この前の王都での話を覚えていてくれたか・・・。

そうだな、有難く使わせてもらう」



先日の大討伐戦では楯を上手く扱えない騎士も結構いましたからね。

そもそも楯を扱うのが苦手な騎士も居るんでしょう?

ピッケルさんとかその典型みたいだし。


そんな人に使ってもらえば討伐の安全性が増すでしょうから。


苦手な事を克服するのは大事ではあるけど、それが枷になって他の技能の練度が伸び悩むようではもったいないと思うんだよ。


「今までは画一的な能力を求めていたが、もう少し柔軟に戦力、戦術を見直した方が良いのだろうか」


その辺は俺には分かりませんが、そう感じるのであれば少しづつでも検証していくしかないでしょうね。



「お前の物づくりで良く言っている事だな、地道に試していくしかないか」



雑談を続けているとフォネルさんとパメラ嬢がやって来た。

「もうそろそろなんだって?寂しくなるね」


でもフォネルさんは以前みたいにうちの村には良く来るんでしょう?


「まあ、そうだろうけどクウネルがきてから遠出する他の仕事の方が多くなったからねぇ」


「いや、参った、参った」と笑いながら自分の額をペシペシ叩いている。



「故郷と言っても1日しか離れていないんだから、王都とここには貴方の事務所も有るんでしょう?

丸投げしないでちゃんとオーナーの仕事もしなさいよ」


面倒事は丸投げしようとしている俺の意図など見透かしているんだろう、眉をひそめたパメラ嬢から釘を刺される。


へい、承知しております、お嬢様。



「それで・・・マーシカは連れて行くの?」


いや、置いて行きますよ。連れて行ったら姫様が困りますよね?



「ええ、そうね・・・。助かるわ、有難う」




少し目を伏せ俺に礼を言うパメラ嬢はホッとしている様では有ったけど、眉はひそめたままだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

次の更新予定

2024年12月28日 06:50

インビジブルウルフ(見えない狼)と呼ばれて~ゲームスキルはやっぱりチート~ 俊足亀吉 @syunsokukame

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画