■ 離婚しました日本死ね

403μぐらむ

■ 離婚しました日本死ね

 2023-12-23

 ■ 離婚しました日本死ね


 先月結婚しましたエントリ書いた元増田です。


 結婚して一月なんですけど、密月の熱は一気に冷めたようで昨日妻に離婚を切り出されました。


 妻的には結婚後2週間で冷めきってたそうで、一応の期間をもって更に2週間の猶予をくれていたそうです。


 結果として「無理っ!」ってなったみたいだけど。


 まあ、その間こっちとしては新婚生活に浮かれていたんですけど、そんな素振りには全く気づかなかったわけで。


 そんなん分かるわけ無いと思う。だって2週間だよ? 婚姻届提出してから。


 別にね、特別な家庭を作ろうなんて思っていたわけじゃなくて、ごくありふれた家庭でいいと思っていたんだけど、

 元妻の理想とはかけ離れていたみたいでどうしても納得できなかったと言われ、この結果となりました。


 受け入れ難かったから粘ったけど梨の礫で全く聞く耳持ってもらえなかったです。

 意味わかんないし、わかんないだろうけれど、これが事実。


 ありふれていない家庭ってなんだろう? 理想って言うけど理想な話なんてしてないし。

 結婚生活がまともに続いている夫婦ってどんな感じで夫婦しているの?


 もうね。

 ぜんぜんわからないんだ。


 疑ったわけじゃないけど元妻も浮気とかしていたわけじゃなさそうだし、俺の方もそういうのはまったくない。


 交際4年で結婚期間は1ヶ月。なんだか結婚した意味全くないし、結婚エントリで祝福してくれた人たちにも申し訳ない。



 今日は有給取って、役所に離婚届出してきました。


 結婚してから生活用品は揃えようって話をしていたので、家には元妻のものは少なく、スーツケースひとつで出ていきました。


 空っぽの室内で今増田書いてます。


 俺はこのあとどうしたらいいんだろう。


 とりとめの無い乱文でごめん。まともに考えが纏まらないんだ。

 とてもさみしいし、虚しい。こんな日本要らない。日本死ね。


                      Permalink | 記事への反応(0) | 21:35




 誰かに慰められたくて書いたわけではないけれど、ここまで無反応だと逆に清々しくさえ感じる。


 トラバもブコメもゼロ。

 もしかしたら誰にも読まれていないのかもしれない。


 もう日記を書いてから2時間は経ったと思うからこのまま有象無象の増田に埋もれていくんだろうな。


 2LDKのマンションの部屋が寒々しくやたらと広く感じる。


 寝室には一昨日まで一緒に寝ていたダブルベッド。


 昨日から元妻の紗絵はこの家を出ている。昨日からは確かビジネスホテルに泊まって、明日には実家に帰る予定だとか……。もうどうでもいいの行動予定だな。


「あと30分でクリスマスイブか……」


 シティホテルの中のレストランでクリスマスディナーも予約してあるし、紗絵への心のこもったプレゼントだって買ってあったのに。

 部屋の隅においてある小さなクリスマスツリーのLEDランプが寒々しい。



 明日は早々に総務課に行って家族手当の変更届書かないといけない。一月分だけ扶養手当もらって、すぐ変更なんて情けないし恥ずかしい。





 ・anond:202X12240215X7  

  メリクリ! これで増田もクリぼっちだ確定だな。ざまぁ





 朝起きて、増田を確かめたら1件だけトラバが来ていた。傷口に塩を塗り込むような蔑みに朝からどん底の憂鬱な気分にさせられる。


「いちいちこんなこと書き込まなくてもいいじゃん……」


 顔を洗って髭を剃り、最低限の身だしなみを整えていく。

 それでも鏡に映る俺の死んだような目は変わらない。


「食欲もないな……」


 もう二度と紗絵の作ってくれる朝食にありつくことはないと思うと食欲どころか吐き気がしてくる。


「とはいえ流石に4食抜きは良くないよな……。コンビニでパンでも買っていこうかな」


 今の今まで朝食を抜く主義じゃなかったけれど、昨日の朝から全く食欲がなく、エナジーゼリーをひとつしか摂っていない。





「あれ? 水村くんどうしたの。朝から総務になにか用事?」


 総務課で受付をしてくれたのは俺の同期の日枝さんだった。どうせならほとんど面識のない人だったら良かったのに。


「ああ、日枝さん。おはよう……。あのさ、実は……非常に言いづらいんだけど……」


「なに? どうしたの?」


「俺、ひと月前に結婚後の手続きしたじゃない?」


「……そうね。したわね」


 変な間を空けられる。そのせいで次の言葉が引っかかってしまう。


「えっと。それが……昨日…………離婚してきた」


「? はいっ⁉ 今なんて?」


「だから……離婚した。それで、扶養を外す手続きをお願いしたいんだ」


 日枝さんは目をまんまるにして驚いていた。

 そりゃ驚くよな。前代未聞の醜態だもんな。たぶん今の俺は羞恥で顔が真っ赤だと思う。傍から見たら何しているんだろうって思われるのは必至だ。


「ええっ! 本当に? 冗談とかじゃないわよね。本当に水村くんは離婚したってことなの?」


「だから、そうだって言っているじゃん。あんまり大きな声出さないでくれよ……」


「ごめんね。じゃあ奥さんの名前と続柄は抹消しておくね。抹消には記入してもらう書類は特に無いからこっちでやっておくわ」


「もう奥さんじゃないけどな。頼むわ、日枝さん」


 従業員名簿の被扶養者欄のチェックを外して、記入されていた個人情報を削除するだけなので口頭でも問題ないとのことで、すぐに手続きが終わるのは俺にとっても助かる。


「ふーん。だからそんなに暗い顔をしているのね。大丈夫? 水村くん」


「ニヤニヤするなよ。ただ、さすがに切り替えるのは未だね」


 元妻との付き合いは昨日の今日で割り切れるほどの短い期間じゃなかったから。一方の紗絵はそうじゃないみたいだったけど……。


「それじゃ、今夜とか暇でしょ?」


「もちろんなんにもないよ。予定は全部キャンセルされたからね。突然のクリぼっちだよ」


「そっか。ん、仕事戻らないと。後でまた連絡するね」


「ん? なにか俺に用事でもあるのか?」


「それも後で。ほれほれ、あなたが離婚しても仕事はなくなりゃしないよ。ささ、お仕事いってらっしゃい」




 結婚式は挙げなかったが、同課の同僚たちからはご祝儀を頂いていたので、非常に申し訳ないので返金しようと持参してきた。


「――ということです、課長。なので、頂いたご祝儀は返却させていただきます」

「いや、それは水村くんが取っておきなさい。ま~なんだが、お見舞い金としてになってしまうけど、ね。元気だしていこう、な?」


 なんとも微妙な雰囲気にはなってしまったけど、先輩方も励ましてくれてなんとか前向きになれそうな気になってきた。



 仕事に没頭することで嫌なことは忘れて午前中の業務は終了。昼休みになる。

 昼飯も先輩に奢ってもらい、ここでもまた慰められる。ほんと人には恵まれたと思う。元妻は除くってことになるだろうけど。


 ブブブ。


 午後も頑張ろうとしているところにメッセージがスマホに届く。


 普段なら紗絵くらいしかメッセージのやり取りがなかったので身構えてしまう。

 恐る恐るメッセージアプリを開くと送り手は日枝さんだった。そういえば今朝方後で連絡するとか言っていたような気がする。


『駅前のDって喫茶店で終業後に待ってる』


「なんだこれ?」


 あまりにも端的すぎて要領を得ないので、聞き直そうとしたら午後の始業時間のチャイムが鳴る。

(まぁいいか。どうせ仕事終わった後は暇だし)




「お疲れ様。今日から一人だからって自暴自棄になるなよ。何かあれば相談ぐらいには乗るからな」


「ありがとうございます。大丈夫ですよ、今日一日仕事したら案外と平気なもんです」


「そっか。じゃ、俺は早く帰って娘のサンタをやらないとだからな。じゃな」


「お疲れ様でした!」


 パソコンの電源を落とし、俺も帰り支度をする。


(そうだ。日枝さんが待っているんだった)


 慌ててコートを羽織り、駅に向かう。

 駅まで続くビジネス街の街路樹は色とりどりのイルミネーションに飾られきらびやかだ。週末ってこともあってこのイルミネーションを見に来ているカップルも多そう。


「たしかDって言ったよな。西口の端っこにある小さな喫茶店だったよな」




「おまたせ、すまんな」


「ううん、大丈夫。わたしもさっき来たばっかりだよ」


「注文は?」


「コーヒー頼んだわよ」


「そっか。あ、すみません。俺にもコーヒーを一つお願いします」


 クリスマスの夜のせいなのか、店内は空いていて、俺らの他には2~3組しか客はいない。


「で、何の用だ?」


「何の用だは無いでしょ? 水村くんのことだから今日だってディナーの予約とかしてあるんじゃない?」


「あ、忘れていた! 今からキャンセルじゃ全部全額支払いだよなぁ……しくじった」


 前日までのキャンセルなら50%負担で済んでいたはず。けっこう高いディナーだったから財布にも高ダメージをくらう事になりそう。

 離婚のショックでそういうことろまで頭がしっかり回っていなかった。予約したのとか覚えていたはずなのにな。


「ふふふ。それ、わたしが一緒に行ってあげる」


「日枝さんは予定はないの? それに離婚されたばかりの俺と一緒なんてイヤだろう?」


「予定は最初からないよ。それに水村くんと一緒なのはまったくイヤじゃないので」


 日枝さんは料金も半分持つと言ってくれたけど、どうせドブに捨てるようなもんだったからいらないって言っておいた。

 クリスマスの夜に食事を共にしてくれるだけでも拝みたいほどありがたいし。ただ本当に拝んだら怒られた……。




「ごちそうさまでした。ねぇ、これ高かったでしょ? わたしこんなお食事食べたこと無いのだけど」


「まあ、結婚してから初のクリスマスだったからな。奮発したんだけど……無駄にならなくてよかったよ」


「やっぱり半分出すよ。なんかこれじゃ、水村くんに強請ったみたいじゃない」


「そんなことはないよ。日枝さんみたいなきれいな女性と聖夜を共に出来たんだ。安すぎるくらいだよ」


 日枝さんは同期の中でも、いや会社の中でも飛び抜けている美人さん。背はすらっと高いし出るとこは出て引っ込むところは引っ込んでいるスタイルだって抜群。

 社内の独身男はけっこう狙っているなんて話もよく聞こえてきたりする。でも彼氏がいるって話は聞こえては来ないんだよね。


「もう、ふざけないでよ。で、この後はどうする予定だったの?」


「あー、このホテルの上階に小洒落たバーがあるんだけどそこでちょっとお酒なんて飲んで、その後は……」


「その後は?」


「一緒にお風呂入って、しっぽりとアレをソレしようかな、なんて。あっ、ごめん! セクハラになるよね⁉ ワイン1,2杯ぐらいで酔ったかな」


 日枝さんは俺の不躾な発言にも怒った風でもなく、なぜか妖艶に微笑んでくる。


「ねぇ、それ、わたしが代わりにしたいって言ったら水村くんはちゃんとエスコートしてくれるかしら?」


「ふぇっ? な、なんで? 冗談にしたってそんなこと言っちゃだめだよ、日枝さん」


「冗談――なんて言っているつもりは無いんだけど。ねぇ、水村くん。ううん、英介くん。どうかしら?」


 どうって言われてもどう答えるのが正解なのだろう。昨日離婚したばかりで、そんな誘いにホイホイと乗るようじゃ軽く見られるんじゃないか? もしかして俺のこと試している?


「英介くんの寂しさと虚しさはわたしが埋めてあげる。あんな女とは別れて正解だったのよ。わたしを選んでよかったって思ってもらえる自信はあるわよ。わたしはいつでもあなたの近くにいるわ」


 情熱的な言葉に心が動かされる。

 でも行動を起こす前に聞いておかないといけないことがある。


「日枝さ「愛美よ」……えっと愛美、さんは俺のこと?」

「うん、ずっと英介くんのことが好きだった」




 良く覚えていないのだけど、数年前の新人歓迎会のとき当時の上司が酒に酔って彼女にセクハラまがいに絡んでいたのを俺が助けたらしい。


 新入社員が上司に何ごとだとその上司が声を荒らげたらしいのだが俺は頑として譲らなかったみたい。


 事なかれ主義で周りが傍観している中、俺だけが彼女を助けたということで、恋心が動かされたということみたいだ。


 ただ、当時は俺にも彼女、紗絵がいたので心の内をあかせなく、愛美さんは片思いに心を苦しめていた。

 止めを打ったのが、俺の結婚だったという。傷心で仕事も手につかなかったらしい。


 それがたった1ヶ月で離婚して、俺がリリースされたということでこの好機を取り逃すな! という意気込みで今を迎えたとのこと。今朝のニヤニヤ顔も嬉しさが顔に出たってことらしい。




「びっくりした?」

「びっくりした。なんだろう。驚きすぎて何も考えられない」


「じゃあ、考えなくていいわ。その小洒落たバーに行ってわたしを酔わせて。その後はお持ち帰りね」

「いいのか?」


「いいからそう言っているのよ。さぁ、お持ち帰りにはリボンを付けましょうか?」

「あ、いや。すぐ開封するので大丈夫です」


 実はここのホテルの部屋も取ってあったりするんだよね……。

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