デリカシーの無いヤツとオチャメな魔族

フィステリアタナカ

デリカシーの無いヤツとオチャメな魔族

ねぇ――。あっ、もしもしタンちゃん。ババアにきなひとができたから、作戦さくせん会議かいぎしようや。なに? 夏休なつやすみの宿題しゅくだいわってない? いつからやったんだ? 9月2日だと? いいからいよ。羊羹ようかんやるから」


「ふぉふぉふぉ。たせたな」


 あたいはエルフのセーラ。まえには、ババアってぶデリカシーのないい「ロン」と、召喚しょうかんされたおバカな魔族まぞくの「タンヤオ」がいる。ロンにあたいの好きな人がバレて、いまいじられている。


「で、ババアは好きなヤツができたということで間違まちがいないな?」

(はぁ。なんでバレたんだろ)


「ほう。好きなオヤツができたのか? 最近さいきん流行はやりのおはぎじゃな。わらわも好きぞよ」

(はぁ。タンヤオさあ、いてた? おやつじゃないのよ)


「タンちゃん。おやつは300えんまでな」

ぬし。おやつにバナナはふくまれるのか?」


「含まないぞ。フルーツなら大丈夫だいじょうぶだ」

「ふぉふぉふぉ。では、チョコバナナをっていくぞよ」

(どこに? この会議は遠足えんそくく会議なの?)


「それはさておき。ババアはどうしたいんだ? 告白こくはくしたいのか?」

「ふぉふぉふぉ。わらわは冷蔵庫れいぞうこにあったプリンをべたのじゃ。ごめんなさいなのじゃ」

(タンヤオそれはね。告白じゃなくて自白じはくってうの)


「えーっと。好きだからそばにいることができればいいの」


「ふぉふぉふぉ。好きだから蕎麦そばを食べたいじゃと? 随分ずいぶんいしんぼうじゃな」

(タンヤオ。鏡を見なさい、食いしん坊はお前だ)


「そうだな。オレが言えることは、そいつの外堀そとぼりからめることだな」

「主、外堀とはなんぞや?」

まわりをかこんでからめるんだよ、げられないように」

「ふぉふぉふぉ。わらわも周りから和菓子わがしに囲まれたいぞよ。和菓子のいえなら最高さいこうじゃ! つくってめればもっといのじゃ!」

(タンヤオ。それはヘンゼルとグレーテル。かりんとうで家を作るなの? あと、最高よりもっと良いってどんなかんじなのよ?)


 会議(漫才まんざい)は20分ほどでわり、タンヤオは魔界まかいかえっていく。彼女かのじょになるためのいい方法ほうほう見当みあたらず、結局けっきょくのところ様子ようすることにした。

(漫才をやられたんじゃ、いい方法なんて見つかるわけがない)


 ロンたちあきれて、溜息ためいきをつきながら周りをみると、いとしのかれがいた。


「えっ……」


 彼のとなりには、あたいの友達ともだちのエルフがいた。彼女は彼のうでからみつき、2人ともしあわせそうなかおをしていた。


(ウソ……)


「ん? ババアどうした?」

「……何でもない」

「あっ、そうか」


 あたいはうつむいた。目頭めがしらあつくなっていく。なみだあふれていくのがわかった。

(なんで。なんでもっと積極的せっきょくてきかなかったんだろう)


「これやるから」


 ロンはあたいの様子を見て、トイレットペーパーをわたしてきた。あたいはり、はなおもいっきりかんだ。


 ◆


「出ねぇ――。あっ、もしもしタンちゃん。ババアが失恋しつれんしたからかいやるぞ。何? ネットゲームでドラゴンと戦っているから行けないだと? いいから来いよ。牡丹餅ぼたもちやるから」


「ふぉふぉふぉ。待たせたな」

(夏休みの宿題は?)


 あたいはロンにれられて、王城おうじょうまで行く。友達の国王陛下こくおうへいか夫妻ふさいぶのかとおもっていたら、王城のぐちでロンにっていろとわれた。


「ちょっと待ってな。カレーをもらってくる」

(カレーは飲みもの?)


「ふぉふぉふぉ。主、激甘口げきあまくちたのむぞよ」


 ◆


 煉瓦れんが舗装ほそうされたみちのところで3人だけの飲み会がはじまった。


「ババア。まあ、飲めや」


 あたいのコップにカレーがそそがれる。

(飲めるわけがない)


「主!! 甘くないのじゃ! リンゴとハチミツを入れてコクを出すのじゃ!!」

「リンゴとハチミツか――。もりに行かないとないな。よし行こう!」

「ふぉふぉふぉ。スモモもモモもりをするのじゃ!」

李下りかかんむりたださず。すももももももってすごいわね)


 あたいは2人が森にえていくのを見て、何だかバカらしくなった。

(はあ。バカバカしい。なやんでいても、しょうがないわ)


 失恋のいたみがまぎれていく。づいたらあたいは前向まえむきになっていた。そしてこうつぶやく。


「そっかぁ、あいつらに感謝かんしゃするかぁ」


 ロンがもどってきた。


「ババア。ハチのを取ってくれ。されても、失恋の痛みよりはマシだろ」

前言撤回ぜんげんてっかい。お前はこれからも感謝なんてしない)


『ギャー! 魔王様まおうさま! 学校がっこうにゲームんだの、ゆるしてくれなのじゃぁぁ! し、宿題はしたのじゃ。だから勉強合宿べんきょうがっしゅく強制参加きょうせいさんか勘弁かんべんしてなのじゃぁぁ!』

(タンヤオは牢屋ろうやに入れて、勉強させないとダメ。魔王様頑張がんばってくださいね)


 こうしてあたいは、平和へいわ日々ひびごしていく。

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