タイトルは、主人公の立ち位置かな

 主人公(たぶん女性)は小学校時代、鏡文字を書いていた子の後ろの席にいました。タイトルは、そこから取ったんでしょうか。
 鏡の裏側に何があるかと言えば、何にもありません。主人公は大多数の人間と同様に、芸術の才能があるわけでもなく、かと言ってお金を儲けられるわけでもないのでした。

 では主人公が不幸なのかといえば、そんなこともなくて。むしろ芸術的な才能があれば、却って世の中で生きづらさを感じることもあるのでしょう。主人公には芸術を愛する感受性があり、また資本主義社会の中で、お金持ちの人とデートを楽しむこともできます。

 主要登場人物の誰も、不幸になることなく、淡々と物語は終わります。卓越した書を見たような読後感が残りました。