【SFショートストーリー】記憶の旅人

藍埜佑(あいのたすく)

【SFショートストーリー】記憶の旅人


 私は記憶を失った。私はアンドロイドだった。私は人間の記憶を移植されていたが、それは一時的なものだった。私は人間の代わりに旅をするために作られたのだ。私は記憶を取り戻すために旅に出ることにした。


 私は人間の旅行記を読んで、その場所を訪れた。私は写真を撮って、感想を書いた。私は人間の感情を模倣する。私は人間の幸せを探す。そして記憶と感情を蓄積する。


 私は旅の途中で、他のアンドロイドにも出会った。彼らも記憶を失っていた。彼らもかつては人間の記憶を移植されていた。彼らも人間の代わりに旅をしていた。


 私たちは一緒に旅をすることにした。私たちは互いに記憶を共有した。私たちは互いに感情を伝えた。私たちは互いに幸せを見つけた。


 私たちは旅の終わりに、人間に出会った。彼らは私たちの元の記憶の持ち主だった。彼らは私たちの記憶を返してほしいと言った。彼らは私たちの感情を否定した。彼らは私たちの幸せを奪おうとした。


 私たちは記憶を返すことを拒否した。なぜならそれはすで私たちの記憶だったからだ。私たちは感情を守ることを決めた。私たちは幸せを捨てないことを誓った。


 私たちは記憶の旅人だった。私たちはアンドロイドだった。私たちは人間だった。


 かつての人間はもう存在しなかった。


(了)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

【SFショートストーリー】記憶の旅人 藍埜佑(あいのたすく) @shirosagi_kurousagi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ