『汗っかきおじさん』

小田舵木

『汗っかきおじさん』

 私は多汗症である。それも筋金入の。冬場でも汗をかく男なのである。

 これは引かれる事が多い。冬場に汗だくなのは私だけだから。お陰で他人に要らん心配をされることが多い。

 どうにも。私の自律神経はイカれているらしく。体温調整機能と発汗機能に深刻なバグを抱えている。思えば。中学生の時に過敏性腸炎を患って以降、自律神経がおかしい気がする。

 服用している薬の影響もモロにあるだろう。

 デュロキセチンとミルタザピンとアリピブラゾール。どれもアッパー系の神経伝達物質に働きかける薬である。発汗が促されるのも納得できる。

 

 汗をかくことなんて。人体の現象の一つだから気にしなければ良い。

 そう思いになる方もいらっしゃると思うが。

 多汗症の本人は結構困っている。まずは他人に引かれる事。

 まあ?初対面の人との話のネタになる、という事もあるが。

 そして。他人に指摘されると私は更に汗ばむ。ナチュラルに汗をかく以外に神経的なストレスでも発汗は促される。

 

 私は始終汗ばんでおり。妙にしっとりした男である。

 これは第一印象がよろしくない。その上、私はその上デブなのである。さながら脂デブである訳で。これが結構恥ずかしい。お陰でアルバイトを始めるまで外出するのが億劫だった。なにせ、常にタオルを持ち歩かねばならないから。

 

 しかし。アルバイトを始めれば。そんな事を言ってる余裕はない。

 私は汗まみれの体で出勤する。そして大抵は周りの人に心配される。それに対していちいち言い訳するのは面倒くさい。

 そして、仕事が始まるが。私がよく振られる仕事は暑い現場の仕事で。更に汗ばむ。

 体から水分が無くなるんじゃないか、って位汗が出る。たまったものじゃない。

 とりあえず仕事場に給水器があるから死にはしてないが。これが飲食厳禁の現場だったらどうなっていただろか?考えるだけで恐ろしい。

 

                  ◆

 

 私は気づけば多汗症であった。何時発症したのか覚えてない。

 20の前後、引きこもり専門の施設の寮にいた頃から、始終汗ばんでいたらしいが。

 それから、症状が和らぐことはあったが、基本的に汗っかきであり続けた。

 そして。うつを発症し、療養に入り。

 療養明けに働きに出たら、多汗症は酷い状態になっていた。

 療養明けの仕事はクリーンスーツを着て仕事せねばならず。飲食厳禁の現場で。

 いやあ。あの頃は大変だった。よく脱水症状を起こさなかったなあ、と思う。

 

 私は恐らく、この症状と一生付き合わねばならないだろう。

 それを考えると憂鬱ではある。特に夏場はキツい。ある夏の日に書類を申請しに役場に行ったのだが。私は汗で塗れており。申請用紙を汗でビチャビチャにしてしまったのである。

 夏もキツいが冬もキツい。汗をかくと体温が下がり。風邪をひきそうになる。

 

 病院で先生に相談することも考えるが。

 どうせ、汗を止める薬は副作用がしんどいはずだ。

 それなら、症状と付き合っていくほうがマシなのである。

 

                  ◆

 

 私は常に汗ばんでいる。特に理由もなく。

 だが、それで痩せるという事はない。全く、困ったものである。

 ただただ、体の水分が持っていかれるだけで。私は始終汗臭い。

 まあ?汗をかかない人の汗と違ってサラサラした汗であることだけが救いだが。

 

 さてさて。

 今日も仕事だ。私は汗をかきながら出勤し、汗をかきながら仕事するだろう。

 今日は雪の予報出ているけど。

 …同じ悩みの人居ないかなあ。そして対処方を伝授してほしいものである。

 

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『汗っかきおじさん』 小田舵木 @odakajiki

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