住職の清正は、怪異による奇病を治す怪病治療師を本職としている。戦闘の不得手な彼は、鋏で戦う和裁士の実正を相棒に、様々な問題と対峙していく。
とにかく、登場するキャラクターの属性、見た目、関係性などなど、盛りだくさんです。
主役バディは言わずもがな、それ以外のキャラも銀髪神父、守銭奴の陰陽師、とそれぞれ違った色を持っています。これだけでも十分濃いのですが……この作品、まだまだこんなもんじゃありません。各キャラ、単語数個では全然紹介し足りません!
同じキャラ内でもギャップがあったり、他のキャラとある点で少し似ているところがあるけれど違う今を生きている対比があったり、それぞれ何かしらの過去が心に引っ掛かっていたり、と単純な属性付与では生まれない魅力も満載です。
そんなキャラたちが絡むと、さらにそこから魅力が生まれます。些細なものから目立つものまで、いろんな関係性が楽しめます。
清の本職が怪病治療師ということもあって、物語には「癒す」ということや、人の抱える苦悩等が関わってきます。
基本的にライトなストーリー進行・文章で、負担を感じずサクサク読めるのですが、そういった描写からは深みを感じ、時おり心にしみたり、ハッとさせられたりしました。キャラ造形や絡みだけでなく、そういったエピソードも魅力だと思います。
この作品は、続きを見据えた布石の10万文字、と思います。
ステータス的には完結しているのですが、物語の続きに思いを馳せるのはもちろん、キャラの今後の活躍や、あのキャラとあのキャラのこういうルートもアリなのでは、なんて想像も個人的には捗ります。
作者様の、目指す先を決めて、そこで求められる要素や文体の作品を生み出せるところ、本当にすごいなぁといつも思います。読み始めてすぐに、この作品は女性向けキャラ文芸だ、と思いました。
個性あふれるキャラやその活躍、絡み、関係性、強めブロマンスが好きな方、そして何かしらのヘキをお持ちの方に特にオススメです!
時は文明開花の明治時代。主人公の清正は、小柄で散切り頭、丸眼鏡、ぱっとしない外見の住職さん。しかし彼の本職は、普通の医師には治せない怪異由来の奇病を治療する、怪病治療師です。
ひ弱で荒事が苦手な清正の相棒として荒事を担当するのは、ちょっと不思議な青年・実正。長身に、茶髪の長髪。和装を好み、大鋏を武器とする和装士の彼は、清正とは正反対のとても人懐こい性格で、怪病に悩まされる町人を連れてくることも多く。
しかしとある一件を切っ掛けに、ふたりはだいぶ面倒くさく拗らせた強敵と対峙することになってしまうのでした。
見た目も性格もだいぶ正反対なふたりの微笑ましいやり取りから始まるこの物語は、ふたりの出会いをたどり、清正の過去を振り返る物語でもあるようです。
強くはありますが無敵ではない実と、戦う力を持たず、それでも相棒の危機には果敢に立ち向かう清。隠された真実が明らかになったとき、ふたりの関係に変化は起きるのか……?
和風ファンタジーにブロマンスを掛け合わせた怪異奇譚、ぜひご一読ください。