ふわふわ

1週間と数日が経っても意識が戻らないリカに、私は疲れ始めていた。

心配やら罪悪感やらで眠れないし、起きている間はずっとあの瞬間がフラッシュバックしてしまう。


「私もう、あなたのために祈れない…。」


 

 「今日は、あの子来てないんだ。」

もし今日の理科でまた寝たら、誰にノートを見せてもらおう。


 そう思っていた6限目、理科。結果から言うと、私は今起きている。一切眠気を感じなかった。


外に何かいる。

「こっちにおいで、一緒にふわふわしよう。」

…?

「ふわふわとっても楽しいから、おいで。」

ふわふわ…?ふわふわ?

「そう、ふわふわ。ほら、手を伸ばして、アタシの手を取って。」

ふわふわ。


しまった、とも思った。

無意識だったか、操られていたか、どちらかわかりはしないが、気付けば体は空に投げ出されていた。


最近、よく見ていた夢があった。あれはきっと何かしらの予兆だったのだろう。


そうして、思い出した。それと同時に理解してしまった。

今この瞬間、私は意識を失っていて、今私がいるこの場所は、夢の中なのだと。


夢の内容を今更思い出す。

ふわふわ、と言っていた少女は夢をみるようになる少し前に聞いた噂と、どことなく特徴が似ていた。

『ふわふわと言って人を攫う妖怪』や、『昔事故死してしまったふわふわした可愛らしい雰囲気の女の子が、死んだ今も犯人を探している』とか。


でも真実はそうじゃない。あの少女は妖怪でも、犯人を探しているわけでもない。

あの子はただの悪霊なのだ。


今更気付いた。

私の友達が夢に、この場所にいたのは、きっと私がいない現実世界で、私が目を覚ますように祈っていたんだと。


「今更気付いても、手遅れだよ。あなたの意識も、アタシの元までふわふわ飛んできてしまったから。」



 意識が曖昧になる。境界線が溶けていく。

あぁ、ごめん、意識がふわふわしてきたんだ。

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ふわふわ 氷翔麗華 @a__q__p

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