格安占い師

桃月兎

新宿の魔女

【新宿の魔女】、この名前で占い師をしている私。

今日も待合室で週刊誌を読みつつ時間を潰している。


今日も今日とて、暇よねぇ。

警察と病院は暇な方が良いって言うけどね。

もっとも私には関係のない格言ね。とは言え、全く無関係な訳でもないけど。


来客予定の電話が鳴ったので、返事をし、気持ちを切り替える。

待っていると五分後に来客が到着。


入ってきた男性客を視て、これは酷いわね、そう思わざるをえない。

髪はクシャクシャ、髭は無精髭、服はヨレヨレの私服、目の下には

隈が出来ていて、顔はやつれている。


男性客に着席を促し、話を促したの。

「彼女と一ヶ月前に付き合い出したんですが、一週間前から彼女から音信不通なんです。電話もLINEもメールもinstagramもGREEもmobageもニコニコも返事が無いんです。彼女は一体どうしたんでしょうか? お願いします、彼女の居場所を占って下さい。誤解の無い用に先に言っておきますけど、ストーカーじゃありませんよ。彼女との通信のやり取りを見ていただいても構いませんし。ツーショットの写真も沢山ありますから。彼女とは水商売とかレンタルとか金銭関係での繋がりでもありませんから。普通の恋人同士です」


「占う前に質問致します。あなたは何故、相手から連絡が無いのだと思いますか? 可能性でいいので箇条書きのように思いつくまま口にして下さい」


占い師から質問されるとは思っていなかったのだろう、相手は戸惑ってから、脳を動かし始めた。


「そうですね、まぁ、まずありえ無いとは思いますが、俺と別れたいと思っている。あるいはSNSに疲れて、SNS断ちをした。もしくはスマートフォンが故障しているか紛失した。それか記憶喪失になっている。じゃなきゃ各サイトのログイン情報を乗っ取られた。あー、あるとしたら、入院中でスマートフォンの使用を禁止されている。それ以外なら、彼女としては俺とは別れた気になっている……いや、それは無いハズ」

最後の部分は苦虫を噛み潰したような顔で呟いている。


態と気付かない振りをしているのかしら、それとも記憶に蓋をしているのかしらね。どっちでもいいけど。今の発言内に正解は無いのだから。

それでも占い師を名乗っている以上、形だけでも占わないとね。


 「では占いを始めます。ンンンンンンンンンンンンン。

ヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌ。ゾゾゾゾゾゾゾゾゾ。ヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲ。ハイ、視えました。次善策は警察に行って全てを正直に話す事です」


「ヘ? 警察に行って、捜索願を出せって事ですか? 確かに警察には未だ相談してませんけど。こっちはそんなありきたりなアドバイスを求めに、来たんじゃないんですよ。大体、『次善策は』って何ですか。最善策を教えて下さいよ」

男性客は怒りだした。


そう反論されるのは想定済み。

でも言わなくちゃ伝わらないしね。


「恵美子さんとしての最善策は、冬一さんの死を願っています」


「死を願うって、そんな訳ないだろ。……イヤ、その前に、何で俺と彼女の名前を知ってるんだ!」

分かりやすく動揺してるわね。


「それは占い師ですもの、名前を占う位当然出来るに決まってるじゃありませんか」


「んんん? 当然と言えば当然なのかも。だけど、死を願うって」

男性客の発言の最中に複数の人間が入ってきた来た。

四人の制服警官である。


「筆円冬一さん、瓦割恵美子さん殺害の件で話を聞かせてもらいます」


男性客こと、筆円冬一は警官に連行されていった。

警官は私がコッソリと呼んでおいたの。



意図的に解答を避けていたのよね、連絡が取れない相手が死亡している可能性がある事を口にするのを。何故なら自分自身が殺害した相手だから。



なんてね、最初から恵美子さんに取り憑かれて首を絞められているのが視えてたからね。

最初に【これは酷いわね、そう思わざるをえない。】って思ったんだから。

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格安占い師 桃月兎 @momotukiusagi

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