〜欠片の庭〜【Piece of Garden】

@ayausagi

1話

【暗闇】

目が覚めた?なぜ疑問形かというと目の前が真っ暗だから。自身の体、手足、首元、顔と順々に触り自分が存在している事を確認するとひんやりとした感覚が背から伝わる。きっと私は横になっていたのだろう探り探り起き上がり前方であろう方向へ歩く、しばらく歩いていると孤独感や不安、恐怖感に襲われ気づけば走り出していた。ここから出れる保証もないというのに……

 動き始めてからどれくらい経ったのだろうか、狂い始めた方向感覚と出口への手がかりが見つからないこの空間に絶望し両膝を着く。唯一感じる荒くなった呼吸と胸に響く痛みは私がこの世界に存在している事を無慈悲にも教えてくれる。

 「——。」

 謎の声に意識を起こされ項垂れた首を上げると朧気おぼろげな光の玉が私にゆっくりと近づいて来ているのが見えた、真っ白な光は時折、青や黄、緑や赤へと色を変えながら浮遊し続けていた。

 「助けて……」

 初めて見る希望の光に縋るように振り絞って出した声で助けを求め手を伸ばす。目の前で浮遊している光に触れると手先から力が抜け私は意識を落とした。

 次に目を覚ますと私は穏やかな日が差し込むベッドの上だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

〜欠片の庭〜【Piece of Garden】 @ayausagi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ