episode18.最終回(タイトル回収もあるよ)
タタタターン、タタタターン、タタタタ、タタタタ、ターター♩
「新婦の入場でございます!」
拍手の音と共に、結菜と結菜の父が腕を組んで進んでくる。先にいるのはもちろん春樹。白いドレスを着た結菜は、白鳥にも天使にも女神に見える。台に立った結菜の白いアレを春樹がそっとめくる。
「誓いのキスを」
アレの言葉の後に、二人はそっと口付けを。華やかな食事と華やかな飾り、御涙頂戴のイベントも終わり、あっという間に二人の結婚式は幕を閉じた。
「いやー、疲れた」
「お疲れ様」
「ふうー」と一息、ネクタイを緩める春樹に水の入ったグラスを渡す。
「俺たちもとうとう家族かー」
「その言い方だと俺と春樹が家族みたいじゃねーか」
春樹は、「ははっ」と笑ってはぐらかし、遠くにいた楓と結菜を手招きで呼ぶ。
「何の話してたの?」
「俺と結菜も結婚したなって」
「だね。海斗たちには先越されちゃったけど」
そう言って、結菜は楓の腕に収まる赤ちゃんを叩く。
「なあ海斗、もう一回楓と結婚式やっとけよ」
「わけわかんねーだろ」
控えめながら引き締まった服を着る楓に笑いかける。そう、俺たちは29歳で結婚式をあげ、32の今年、初の子供に恵まれた。
「あと10人! 頑張ろ」
「楓の身がもたないだろ。サッカーチームでもつくんのかよ」
楓は赤ちゃんの頭を撫でながら近くのソファに座る。
「それに、海斗じゃ十三人家族を養う給料ないでしょ?」
「ある家庭の方が少ないわ」
言い方悪いけど、子供一人に何円かかると思ってんだ。結菜にツッコむと、尚も続ける。
「春樹なら行けるもん。お父さんの会社の次期社長候補だからね」
「けっ、金持ち家族が。焼肉奢りやがれ」
「かっぱ巻きだけな」
「寿司じゃねーか。しかも回転寿司」
百円とかのやつだろ……。ケチくさすぎる。
「でも私達の家族はお金はないけど愛はあるもん」
「お金はないって……ごめんね。もうちょっと頑張るよ、お父さん」
楓の無慈悲なフォローに胸が痛む。ただの平社員で申し訳ない。本当に申し訳ない。頑張って昇級するよ。
「春樹ももうお父さんか……」
「いや、子供できてないから」
フライングが過ぎる。
「私たちの子供には田中って名付けよう」
懐かし! 休み時間に遊びで決めたやつだ! ※episode6
「俺たちの子供は顔面偏差値も偏差値も高いな」
くっ……間違いねぇ。結菜と春樹だぞ。クレオパトラとか生まれてくるんじゃねぇかな。
「俺たちの子供だって、アレだ。優しい子だよ」
「うんうん、優しいすぎて、一人で溜め込んで深夜に泣き出すぐらい」
楓もコクコクと頷く。そうなのよね。深夜に泣き始めるせいで、二人とも最近寝れてないね。慣れない子育てって大変!
「きっと私たちの赤ちゃんは家事とかできるよ。生後三ヶ月でムーンウォークしだすよ」
「マイケル・バケモンじゃねーか」
今の子、マイケルジャクソン知らないか。滑ったな。ムーンウォークだけに。
「私たちの子供を凛ちゃんが教えることもあるかも知れないよね」
凛ちゃんってのは神崎さんね。今は小学校の先生として、いろいろ教えているらしい。あの神崎さんが……。すごいよ。あの人学年下から五番目だったのに。※episode7
「なんかそれ良い! 成績とか手心加えてくれそう」
「楓の発想が黒いわ」
楓も見ての通り、勉強あんまり得意じゃないからね。俺たちの子供は平均的な学力になるだろう。
「黒いと言えば、海斗のち◯こがさ……」
「急な下ネタ!? この歳になってやめろよ!」
酷すぎる。今の今まで下ネタ避けてきたのに。…………避けてたかな? ボケが雑になってきてる。
四人で笑い合うのは、多分ジジババになっても続くのだろう。二十年先も三十年さきも、こうやってバカ言い合って高らかに声をあげるのだ。
「あっ、春樹、ネクタイ緩んでるよ。締めてあげる」
結菜が春樹のネクタイをキュッと上げる。
「ありがとう。でも今度は頬が緩んじゃった」
「私も……」
目の前で密着し出した二人を見て、楓がツッコめと言わんばかりにこちらを見てくる。
「はぁ…………イチャイチャのラブコメを俺に見せつけるんじゃねぇ!」
毎度ながらの声を張ったツッコミ。これは、まだまだ続く俺たちのバカみたいな物語の一話に過ぎない。
イチャイチャのすぎるラブコメディに俺のツッコミはいらない––––––––[完]
「いや、タイトル変わってんじゃねぇか!」
イッチャイチャのラブコメを俺に見せつけるんじゃねえ! 赤目 @akame55194
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