第5話
もふもふの黒いストイックなロングコートを纏ったアーサリスは、いつの間にかずいぶん大人っぽくなった。私が転ばないようにエスコートする手も大きくなって、声も低くなって、目の高さは全く違う。
あの時は抱きしめたら腕の中に入りそうなくらい華奢で発育不良だったアーサリスが、今ではずいぶん立派になった。
「あなた、確かもうすぐ18歳よね」
「1月で18になります」
「そう。……今日までよく頑張って仕えてくれたわね、嬉しいわ」
「……ええ、ずっと18歳の誕生日を待ち侘びておりました」
アーサリスは私を見下ろして、優しく目を細める。
アーサリスの視線の熱に、あれ?と思う。
なんだかワクワクするような、ドキドキするような、不整脈っぽい感覚になる。
「誕生日に欲しいものがあるんです」
「何かしら、いいわよ。今から準備しておくから、今のうちに教えてちょうだい」
アーサリスは微笑んだ。
「準備は整ってます。外堀とか色々」
「? 私がプレゼントを渡す側なのに?」
もらう側が「整ってます」と言うのは何かおかしいのではないだろうか。
しかしながらアーサリスは、ただ意味深長に微笑むばかりだ。
「後はクリス様のご返答次第です」
「アーサリスが欲しいものならなんでもあげるわ。遠慮しなくていいからね」
「ほんとですか?」
「本当よ。出会い頭に全裸になれた私が、あげられないものが他にあると思っていて?」
「へー、楽しみだなあ」
アーサリスは綺麗な顔で、思わせぶりに笑う。
その笑顔はすっかり大人びたけれど、いつでもいつまでも可愛い私のアーサリスだ。
ーー彼が本当に欲しいものを知った時、私がどうなったのかは秘密だ。
守りたい人のために全裸になれる私でも、隠したいものはそりゃあちょっとは、ある。
アーサリスにしか、教えてあげないもの。
転生悪女は推しのため一肌脱ぐことにした。 まえばる蒔乃 @sankawan
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