第10話 人間を好きになりたいけど好きになれない

 犯人に急所の一撃を喰らわせたが流石にダメージが大きすぎることで崩れ落ちるツヴァイ。


「ツヴァイ!大丈夫か?」

「触るな!!この程度の傷など大したことはない」


 大したことないとは言えないほどの傷で、上半身の人の部分は良いが下半身の馬の状態は血まみれで深い傷なども見られておりかなり深刻な状況だ。


「これテイクアウトしたやつ、後で食べてね」

「恩に着る。しかし、布装備だと傷が深いな…回復までに時間はかかる」


 ログは誰かの助けが来るまで何か出来ることはないかと考え、着ている服を脱いで出血している箇所に圧迫止血を試みるも体格の大きいケンタウロスでは人間の力では止血は無理であった。そんな必死になる彼を見て微笑むツヴァイの元に現れたのは同じくらいのケンタウロスだがポニーテールで藍色の髪とムスッとした顔が特徴の女性ケンタウロスと目隠れで目元が見えない気弱そうな男性ケンタウロスが救急バッグを肩に下げて訪れる。



「ツヴァイ兄さん!大丈夫?」

「アイン、来てくれたのか…その子は止血を手伝ってくれたんだ。犯人ではない」

「は、犯人はこっちで押さえておくね…君は下がっていて、転送魔法でキャンプまで送るから」


 指に嵌められた指輪に向かって何かを詠唱し始める目隠れのケンタウロス。

 ムスッとした女性のケンタウロスはアイン、ツヴァイとは兄弟関係であることは確定だ。


「君、名前を聞かせてくれないかな?」

「ログです、人間で現在は情報家をしております」

「情報家?聞いたことのない職業だが話はあとだ。ドライ、転送魔法はまだなの?!」


「い、今やってる所だよ。周りに見られないように保護の呪文は終わったけど…」

「なら手伝って。ツヴァイ兄さんを処置するから」


 ツヴァイは2人のケンタウロスに支えられて転送魔法陣へと歩みを進める。


「情報家のログ、ツヴァイ兄さんを助けてくれたことは感謝するが私は君を認めた訳じゃない。人間に助けられたなんてケンタウロスの恥だ、今後は二度と会うことはないだろう…さらばだ――」


 そう言い残して3人のケンタウロスは消えてしまう。

 行き先は拠点キャンプだと言うが人間からケンタウロスを認知するために青銅蹄鉄がいる訳なのに不要なプライドが邪魔をして素直になれない所に難点があると見たログは夜に図書館でケンタウロスのことについてしばらく宿屋で読み漁る。


 拠点キャンプへと戻ったツヴァイ兄さんを連れて帰ってきたアインは応急手当をした後に自室へと帰るとすぐにベッドに上半身を預けた。


「なんであんなこと言っちゃったんだろう…」


 兄さんを助けてくれたお礼はしたいが同族以外の助けを借りることが何よりも許せなくて、足が速ければ耳が遠くまで聞こえていればと今日の振舞などを反省していたが、素直になれない自分たちが変われないと嘆いていた。


 “人間を好きになりたいけど好きになれない”

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