第12話 一緒に登校②

 ふーちゃんを撫で続けていた俺だが、このままだと修二たちとの待ち合わせに遅れてしまうため、撫でる手を止めてふーちゃんと歩き始めた。


「そういえば、俺からの質問の答え聞いてないけど……」

「あ、えーとね」


 俺からの質問というのは、「なぜこんな早い時間にふーちゃんがいるのか」ということだ。

 俺の右腕に抱きついているふーちゃんが、嬉しそうに答える。


「昨日、紫音ちゃんと電話していたんだけど、ゆーくんと登校の約束をしていないことを伝えたら、紫音ちゃんがいつも待ち合わせしている時間を教えてくれて、そこから計算して待っていました!」

「そうだったのか……」


 まさか、紫音と連絡先を交換していたとは。 まだ俺も交換していないのに!

 はっ! なら、今がチャンスなのでは!?


「あ! じゃあ、それならさ。 これからも一緒に登校しようか。 あと、昨日は色々あって忘れていたけど、連絡先も交換しよう」


 俺からの提案に、ふーちゃんが「うん! しよしよ!」と言いながら、スマホを取り出す。

 よくやった俺! 頑張った俺!


 こうして、俺はふーちゃんと登校の約束と連絡先の交換をした――




「えへへ。 ゆーくん好き~」


 そんなことを言いながらふーちゃんが俺を抱きしめる。 そして、俺も片手でふーちゃんを抱きしめ、もう片方の手でふーちゃんの頭を撫でる。

 んー、周りの視線が痛い。


 ちなみに、今は駅前で修二と紫音を待っているところである。 いつもなら既に合流しているのだが、どうやら、電車の遅延が発生しているらしい。

 そのため、ベンチに座り、二人で待っているのだが……こう、その、物凄くふーちゃんがくっついてきます。 はい。

 別に嫌では無いのだが、こうも外でくっつかれると周りの視線が痛くて、気になってしまう。

 一応、ふーちゃんにここが外であることを教えたのだが……


「昨日、キスを見られたんだから、これくらい大丈夫だよ!」


 と、笑顔で言われてしまった。

 まー、確かに昨日のキスに比べたら、今のこれはマシなのかもしれない。

 けれど、ここで俺もがっついてしまったら、周りの人に迷惑をかけてしまう。 だから、俺は理性を働かせて――


「ねぇねぇ、ゆーくん!」

「ん? どうしたのふーちゃん?」

「んー、呼んでみただけ~。 えへへ」


 なにこの子! 可愛すぎるんですけど~!


「~~~っ! ふーちゃん可愛い! 好き!」

「もう、ゆーくん抱きしめすぎ! でも、もっと抱きしめて~!」


 ふーちゃんが嬉しそうにしながら言う。 それを聞いて俺は抱きしめる力を強くする。 勿論、ふーちゃんが痛くないように加減はしている。

 えーと、つまり何が言いたいかと言うと、ふーちゃんが可愛すぎて、理性が仕事を放棄しました。 諦めてイチャイチャしようと思います。 はい。








――一方その頃、修二と紫音は、


「「……何あのバカップル」」


 二人のあまりにも甘い空間に突入する勇気を出せずにいた。

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結婚を約束した幼馴染みと再会したので、まずは恋人になりました 果物 太郎 @kudamono-tarou

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