第2話

 いきなり、望まぬ形で異世界転移を果たしてしまった。

 別に元いた場所にそこまで思い入れはなかったので、動揺はそれほどでもなくだが、強いて言うならあっちの父母が心配していないか心配だ。

 模範的な親だから、多分心配するだろうが。

「さて」

 持ち物はポテチだけ。悪けりゃここで餓死するな。良くて野宿できるところ、食べられる物を見つけられるといったところか。

 とりあえずじっとしてても始まらないので少し移動する。

 見渡す限りの大自然、その未知の生態系を探索してみようではないか。

 異世界に来て。

 いや、元の世界でも、しばらく止まっていた足を引き上げ、一歩。前へ引き出した。

                  *

 せめてスマホがあればな~。あっても、意味ないか。

 そう思った瞬間、片手でつまんでいたポテチの袋が、ずしん。と急に重くなった。

「……なんだ?」

 その違和感に気づいて自分は、ポテチの袋の中をのぞきこむ。

 中をごそごそと探ると、四角い板のようなものが入っているのが確認できた。

 それを取り出してみると……

「……スマホだ」

 スマホがほしいと願ったら、なんとスマホが出てきた。ポテチの袋の中から。

僕の使っていた機種と同じものだが、僕のものではない。というか全体的に真新しいな、もちろん脂ぎっていて汚いが。

 これはあれだろうか、神様がみていて、願ったものを用意してくれる的な感じだろうか。

「……神様!どうかこの私に城をも凌ぐ巨大な豪邸、そして溢れんばかりの食料と移動手段。できればゲームをお授けください……なんて」

 今のスマホの出現。明らかになにかギミックがあるのは確かなので、そんなことを声に出しながら願ってみる。

「流石にそんなぬるくはないか」

 そう口に出したら、ずん。とまた袋が重くなる。

 これは、と思い袋をあさると。

「携帯ゲーム機。と部屋でやってたゲーム」

 なるほど、でもなんでゲームだけ……

「考えられるのは、コスト制限があるとか。それと大きさとか……」

 この能力、何かはわかっていないが僕にも転移ボーナスというものがあることがわかった。

 さて。

「どうするかなぁ……」

 これっぽっちの能力。ないよりマシだがあっても死線をくぐり抜ける一手を切り抜けられるものでもなさそうだ。

 というのも、狼のようなモンスターがぐるっと僕を囲んでいる。

「……僕の人生もここまでかな」

 ポテチを一枚取り出して、そんなことを口にしながら……その時、自分が何を思ったのかはわからない。

 ただ、生きたかったのはそうなのである。

                  *

 取り出したただ一枚のポテチが、まばゆく光をまとっている。

「今度はなんだ……!?」

 その光に驚いて、ポテチをパッと手放してしまう。その瞬間

 バンッ

 大気の爆ぜるような音とともに、視界が真っ白な蒸気?のようなもので覆われる。

 驚いて尻もちをついた自分は、見上げた先のその光景を目の当たりにする。

「どう、なってるんだ」

 見上げた先。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 この世界に来て、最初に見た。巨大な体に見合う巨大な翼。

 話によると炎さえ操る事のできる能力と、人間との会話を可能とする高い知能。

 この世界に来たこと、自分が戻れないことを悟らせたその存在は。

「うわぁ……」

 その巨大なは、いま目の前に現れた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

パラレルちっぷす!! 鱸貝 @kaikunheatup

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ