第9話
「ふん。お前らはなぜ一つしかつかえない」
八雲は既に抵抗を諦めている。
目から闘志は失われていないが。
「……二つ以上の魔石を帰属すると反発しあって魔法が乱れる」
「ちっ。まだ日本の魔術はこのレベルか」
「俺の質問にも答えてくれないか」
今この場で殺されるとしても、俺は人類の未来のためにこれを聞き出さねばならない。
阿手原は竜の亡骸に腰を落とす。
「帰属と言ったな。魔石は本来、魔物の核——噛み砕いて言うと内臓器官だ。もともと制御という概念がない」
「じゃあ君は……制御してるってことか?」
「当たり前だろう。術式起動と操作の条件制御は基礎の基礎だ」
具体的なことはわからないが、こいつは確実に人類が知らない魔法の何かを知っている。
この際こいつが何者かは二の次だ。できる限り情報を聞き出せ。
「まさか、自分で魔法を作ったとか言わないよな?」
「もういい。お前たちから知りたい情報は得た。 ——ほら、仲間は帰るみたいだぞ」
仲間?
俺と八雲がいる場所に光の粒子が集まり始める。
視界が明るく染まっていく。目を開けていられない。
「常田、待て、まだ聞きたいことが——
「無理だよ、今、生島さんたちを失うことはできない」
シェルター……転移ポートだ。
遅かったか……。
「いや、あいつは俺の命より遥かに重い情報を持っていた!!」
「話すかどうかも、それが確かかもわからないよ。それに賭けるのは生島さんの命だけじゃない」
八雲……。
「……怪我ないか」
「私はなんとも……」
ひどい顔だ。元が負けず嫌いではあるが、それよりも正義感の強い奴だった。
「悪い、冷静な判断ができてなかった。阿手原と接触するチャンスはいくらでもある」
「車は置いてきてしまったけどね」
「だけど、次に戦ったら私たちは勝てるのでしょうか」
勝てる、とは言えない。なぜならあいつの底はまだ知らないからだ。
俺たちが戦っているのは魔族であって阿手原じゃない。全戦力を投入するわけにもいかない。
ん?
そう言えば——
「人がいなくないか?」
「そういえばそうだね。僕たち以外に一人もいないなんて……」
補給班も調査班もいない。タイミングか?
いや一人も残さないなんて判断は——
「まずい、今すぐ外に出るぞ!!」
「まさか……」
「金町エリアが危険だ」
地球は魔族に支配されたようです。 不思議たぬき @meedea
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