第8話



先手は譲るってか。

舐められてるな。



「八雲、わかってるな」

「はい」



魔法——今朝検出された謎のエネルギー、今は魔力と呼んでいるが、それを魔石を媒介に俺たちの使いやすい性質に加工し、行使するもの。


裏ではどれだけ早く検知していたか知らないが、ともかく日本の総力を上げて生み出したオーバーテクノロジーだ。


当然、俺たちのような国家組織じゃないと存在さえ知らない。



それを阿手原あずはらは使える。

その未知性は計り知れない。


遠くから観察できた黒い槍のような魔法、あの貫通力とスピードを警戒しながら無力化する。



「喧嘩売ったのはそっちだぜ。卑怯とかいうなよ」


「口より手を動かせ」



ちっ。

ここまで人に舐められたのは久々だな。



俺と八雲は散開する。

こいつの種がわからない以上、安全距離は保たせてもらう。



八雲が魔法を発動する。

あいつに割り当てられた魔石の効果は『風渦魔法』。

高圧縮された大気を密度を保ったまま高速回転し、自在に操る魔法。


風ゆえに防ぐことは困難、視認も慣れなければ難しい。

小手調べのつもりかは知らないが、初見キラーの一撃で終わらせてもらうぜ。



辺りのチリや砂利が巻き込まれ、灰色の竜巻となって阿手原を襲う。

おいおいそれはやりすぎだろ、直撃で死ぬぞ。




「陰式、黒鉄くろがね



出た、あの黒い何かだ。

竜巻の方向に広く展開して遮る。

あんな使い方もできるのか。



「まだまだぁっ!!」



二つ目の竜巻。八雲が出せる最大数、しかも見たところ最大出力だ。

軍用車であっても風穴を開ける威力だぞ、魔族ならまだしも人間に打つ威力じゃない。



「一辺倒だな。柔軟性に欠ける」

「なっ!!」


阿手原が指を動かすと黒い盾から線が日本伸びて、八雲の両腕に巻き付くように固定する。



よく見ている。


八雲の魔法は腕を振ることでコントロールしている。

だから最大二つ、もうあいつは竜巻を動かせない。



だが、良い仕事をした。



阿手原が八雲を拘束すると同時に俺が反対側の側面から後頭部めがけて蹴りを入れる。


俺の魔石に込められた魔法は『運動強化』。

派手じゃないが、対魔族——今は人間だが、を相手する時はこれ以上にない。



俊敏性をベースにした奇襲性と殺傷力。

鍛錬を積んでいればいるほどその効力は何倍にもなる。



若造に舐められたまま終わるSATじゃない。



足に鈍い衝撃。


「——な」



止めた?

格闘家でも入る角度だったぞ!



「体術は無いと思ったか? 能天気な奴め」

「ぐっ……」



逆に俺の腹へ回し蹴りが入る。

これは、人間の力じゃ無い。

運動強化と黒い何かの魔法、二つ使えるのか!??



「ありえない……なぜ二つ魔法が使える」


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