足利未来研究所は、人材不足に喘いでいた。特に若手が一人もいなかったのである。それ故に、企業としてどうすればよいのだろうかという課題は毎年上がっていた。給与なのか、広告なのか、何を与えるべきかはわからなかった。


 将来性を導き出せなかった会社は、ついに非道へ走る。


 その解決方法とは、有用な人材を軟禁し精神を揺さぶることで半強制的に入社させる手法である。明らかに常識外れであり、問題となる手法であった。


 法的な問題もあれば、倫理的な問題もある。それだけでなく、精神的に異常をきたす人すら出る可能性もあった。


 しかし――この手法は上手くいってしまった。

 たった一人の若手が、入社してしまったのだ。


 これから、この会社は同じような手法で人材を確保していくだろう。

 一生、人を壊していることに気が付かないまま、繰り返していくだろう。


 彼らを止めるすべは、もはやどこにもなかったのだ。


【終】

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芦原蛯名という男の人生 チャーハン @tya-hantabero

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