第3話 VOCALOIDと料理

「今日はミコがとっておきの料理をご馳走するから楽しみにしててね!!」


可愛らしい柄のエプロンを付けたミコが台所で張り切っている。

現在、親は絶賛出張中だ。俺は料理が出来ないのでコンビニで買ってくると提案したのだが、ミコは自分が作ると言って聞かなかった。


「ミコは料理したことあるのか?」

「ないよ、今が初めて。」

「初めて?大丈夫なのか?」

「大丈夫、大丈夫。ミコの初めてはマスターにあげる!」

「誤解を生む表現はやめろ」


初めてということで不安で仕方が無い。

「で、何を作る予定なんだ?」

「ヤミナベ!!!」

「普通の料理にしてくれ!!」

「えーー、つまんなーーい」

「肉じゃがとかでいいだろ、無難に」

「しょうがないなぁ、、、」


ミコはその後もぶーぶー言っていたが、結局肉じゃがで納得してくれたらしい。


「材料は冷蔵庫にあるぞ」

「了解です!マスター」


「まずは人参から切りま〜す」

ミコは妙にノリノリだ。初めての料理で興奮しているのだろうか。それにしても料理をしているミコの姿も可愛いな。


「ミコ、そのエプロン似合ってて可愛いな」

「へ?」


見ると、ミコは顔を真っ赤にしてこちらを見ていた。


「おい、包丁使ってる時によそ見したら危ないぞ」

「え…あ、ご、ごめん」


ミコは再び人参を切り出した。

「マスターが唐突にあんな事言うから…」


ーーーーーーーーー


「できたーーー!!」


しばらくしてミコが大きな声を出した。どうやら料理が完成したらしい。


「さ、マスター、どうぞ」


お言葉に甘えて頂くとしよう。

「じゃ、頂きます!」


「ちょっと待って!」

「ん?どうしたんだ?」


するとミコは箸でじゃがいもをつまんだ。まさか、俺に食べさせる気じゃないだろうな。


「はい、マスター。あーん」

「いいよ、自分で食べれる」

「こらっ、素直に従いなさい」

「誰目線だよ」

「いいから、あーん」


俺は仕方なく口を開けた。

「はい、マスター召し上がれ」


恥ずかしかったが、俺は仕方なくミコに従った。内心ちょっと嬉しかったのは内緒。


「どう?」


ミコが少し不安げな顔をして尋ねてくる。


「うん、めっちゃ美味しいよ!!」


するとミコの顔がぱぁーと明るくなった。


「どう?嬉しい?」

「あぁ、もちろん嬉しいよ。まさか自分のボーカロイドの手料理を食べられるとは思ってもみなかったからな。幸せだぁ…」

「うんうん、私に食べさせて貰ったのがそんなに嬉しかったんだね」


ミコがニマニマしながら、こちらを見てくる。

これは仕返しが必要だ。

俺は箸で人参をつまむと、ミコの方へ向けた。


「はい、あーん」

「ちょっ、マスター、どうしたの?」

「いいから、口開けて」

「ボーカロイドは食べ物食べられないの!」

「昨日部屋でポテチ食ってたろ!!いいから口開けろ」

「もうっ」


今度は俺からミコに食べさせてやった。

ミコは照れたような顔をしていた。いい感じで仕返しできたな、と思ったのだが、やってた俺も恥ずかしくなってきた。周りからバカップルだろう、ここが家で良かった。


ふと思ったのだが、この肉じゃが、何かが変だ。何か足りないと言うか、、、


聞こうと思いミコの方を向くと、ミコは自分の顔に玉ねぎをすりすりと擦り付けていた。


「何やってんだ?」

「この玉ねぎは今日からミコの家族なんだ!」

「それ、肉じゃが用の玉ねぎだぞ」

「相変わらずマスターはすぐ玉ねぎを食べようとする!外道!!」



ひょっとして俺の1番のライバルは玉ねぎだったりするのかな?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

俺の彼女はVOCALOID 93音 @otohimata

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ