第6話「革命」

 ここで働き始めてから少し経ち、私の心は限界を迎えた。”生命の本質”それを忘れてしまっているようだ。ならば思い出させてやろう。私はそう思い、行動に出た。


ある日私は、出勤し、電子機器を預けろと言われた。いつものことだ。

”勝負は、この瞬間にかかっている。”

私は、電子機器を預けず、職員たちの間を駆け抜け、一階へと向かった。勿論、職員たちに追いかけられた。だが、誰も私を止めることはできない。


誰も私に、触れることはできない。運気で言えば、”生命の秩序”を守ろうとしている私の方が、圧倒的に高い。

私は、一階につくと、すぐにその光景を、カメラに写した。そして、後ろから追いかけてきていた職員に言った。


私:「この動画は、クラウド上にバックアップしてある。デバイスを壊したところで、意味はない。そして、私が許可しなければ、このデータは、十分後にSNSに投稿される。」


職員たちは、呆然としていた。そして、その隙に、私は食堂の奥へと行き、食堂全体のスピーカーに繋がるマイクをとり、大きな声でこう言ってやった。


私:「全職員に告げる。この食堂では今、”革命”が起きた。もうこんなことをしなくてもいい。この食堂の秘密を世にばらされたくなければ、今すぐ、生活保護受給者の方々を解放しろ。そして、彼らに、土下座して謝れ。」


そう言われ、職員たちは、上層部を除いて、どこかうれしそうな表情を浮かべた。皆、自分たちのやっていたことに、少なからず罪悪感を感じていたのだろう。私も彼らに謝った。そして、神に謝った。


「ごめんなさい。」

「すみませんでした。」

「気づかせてくれてありがとう。」


食堂内は、そんな言葉で満ちていた。SNSには、公開しないことにした。


ただ、私はこれから生きていけるのだろうか。今のことで、多くの組織を敵に回してしまったことになる。だが、そんなことはどうだっていい。



私:「さて、これからどうしようかなぁ」


私がそういうと、職員のうちの何人かが言った。


職員:「実は、俺たちも、近いうちに同じことをしようと考えていたんです。」


そして、その職員たちは、私たちに”ある提案”を持ち掛けてきた。



 数か月後、この食堂は、職員たちの提案と努力により、小さな農地となった。都会の中に、ぽつんと畑があるのは変だが、地域の人たちからは、良い目で見られた。そこでは、本来なら捨てるはずの食品を肥料として使い、収穫した野菜は、地域の人へ無料で提供した。

 この畑は、誰一人いやな思いをしない、”最高の畑”となった。

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ゴミ捨て場の料理人 水町 啾魅 @Syamy-mizumachi

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