第5話「非理」

 私は平日、毎朝7時に起きて、色々した後、8時15分には家を出て、8時半には食堂へ到着する。食堂に入るとまず、二階で電子機器を預け、身体検査を受けた後、一階の食堂へと向かう。そして私は、毎回絶望する。

そして私は、厨房に立ち、料理をする。上司からは、こう、指導を受けていた。


上司:「皮は、食品ではない。捨てたとしても、食品ロスにはならない。だから、なるべく厚く皮をむくんだ。例えばリンゴだったら、こうやって・・・」


 私はそれを見て、衝撃を受けた。リンゴの2/3を無駄にしている。そして、出来上がった料理も、私が面接の日に出された料理とは全然違う。見た目からして、吐き気がする。作っている工程を知っている私は、それを生活保護受給者の方々に出すのが申し訳なく感じる。

 出来上がった料理は、ウェイターに渡す。そしてウェイターが、強制的に料理を食べさせる。

”ウェイターは皆、体格のいい男性だ。”


 この食堂は、生命を踏みにじっている。怒りに満ちた自分の心を、意識で制し、何とか表情に持っていかない。


 できることなら、今すぐこの食堂をやめて抜け出してしまいたい。だから、あの契約を結ばせたのだろう。何か方法はないか・・・。考えるだけ無駄だった。数字のためだけに、ここまでするのかぁ。


私の思いは限界に達し、一週間後、行動に出た。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る