幕間

運命によって出会えない二人

魔王がいるという事を知った聖女プリン・アラモードはいてもたってもいられなかった。元の世界ではなんの運命が邪魔しているのか、魔王と出会う事はできなかった。

 

「こんな世界に逃げ込みやがって、すぐに殺してやる」

 

 と宗麟が一緒に探してやるから放課後まで待てと言われていたが、もはやそんな時間待てるはずがなかった。聖女の仕事は勇者の補佐、様々なところで言われ、言った連中をそれこそ全員ぶん殴った。有り余る力、魔物の軍勢を滅ぼしても、邪神という物を従わせても、そして別の世界で怪異なるモンスターのような何かを殺してもその渇きは癒えない。自分を満足させる殺し合いができる者はもはや魔王しか存在しえない。

 

「魔王城にもいなかったクソ魔王とようやくやりあえる」

 

 法衣を着たまま歩いている聖女プリン・アラモード。ヘンテコな格好だが、抜群の容姿を誇る聖女プリン・アラモードをナンパしよとする男達が近寄ってくる。

 

「きみ、こんな時間にそんな格好で何してんの? 学校は?」

「ああ? お前ら魔王の居場所知ってっか?」

「知ってる知ってる! 連れて行ってあげるよ!」

「そうか、さっさと案内しやがれデコ助共」

「じゃあ車乗って」

 

 聖女プリン・アラモードは言われた通り、車に乗る。そして車は走る。走り、郊外へと聖女プリン・アラモードは連れていかれる。そこはお城を模した形の建物。

 

“ラブホテル・魔王城“

 

 ラブホテルの駐車場からそのままホテルの中に部屋の中で二人お男に聖女プリン・アラモードは尋ねる。

 

「おい? 魔王はどこにいるんだよ? あぁああ?」

 

 服を脱ぐ男達、そして「俺が魔王だよ! プリンちゃーん! もうここまでついてきたんだから分かるよね?」とベットに押し倒される。そこでようやく聖女プリン・アラモードはここには魔王はいないという事を理解した。そして無駄に時間を使わされた事に怒りを覚える。

 

「テメェら、私を騙して時間を無駄に使わせたな? 覚悟はできてんだろうなぁ? ああ?」

「そんな顔せずに楽しもうよ!」

 

 そう、それが最後に彼が調子に乗った言葉だった。怒りが爆発した聖女プリン・アラモードの魔法はラブホテルを半分吹き飛ばした。ほぼ全裸で抱き合いながら恐怖する男に聖女プリン・アラモードは「おい! お前ら、あのブーンて走る乗り物出せや? 私の時間を無駄に使いやがってぶち殺すぞコラぁ?」と聖女プリン・アラモードは足を手に入れた。後部座席に座り、運転席とナビシートをガスガス蹴る。

 

「おい! 魔王の居場所見つけるまで帰れると思うんじゃねーぞコラぁ!」

「ヒィイいい!」

「勘弁してください!」


 そんな二人に聖女プリン・アラモードは「はぁああ? 勘弁するわけねーだろ! カス共が! おい、あと腹減ったぞ飯用意しろやコラァ?」一人の男性はコンビニで買い出しをしてくると言って帰って来なかった。それに運転をしていた男は、

 

「あいつぅ! 逃げやがった……」

「おい、魔王は何処だ? 早く見つけろ」

「知りませんよ。魔王ってなんですか!」

「あぁああ? ザナルガランのクソ魔王に決まってんだろ? 早くしろ!」


 じょわあと失禁し、男は泣き喚く、それに「チッ」と舌打ちをすると、聖女プリン・アラモードは「もういい。クソが、セイクリッド・バーニング!」と車をバラバラにして後部座席の扉を蹴り破ると、聖女プリン・アラモードは泣きながらハンドルにしがみついている男にペッと唾を吐きかけて、歩み出す。食事を用意させようとしたが、逃げた奴に怒りながら「神よ神。私に施しをしなかったあのクソ男に地獄に苦しみを与えろ!」と呪いをかけて、歩みだす。

 知らない町、知らない世界。だが、なんとかなるだろうと聖女プリン・アラモードは歩いていると、一人の少年が向こうからやってくる。黒い鞄を背負った男の子がこっちをじっと見ながら歩いてくる。

 すれ違う瞬間「おい、クソガキ」と声をかけると、男の子は「なぁに? 外国のお姉ちゃん」と返すので、まぁ知らないだろうが一応聞いておくかと。

 

「お前、魔王の居場所知らねーか?」

「魔王様? うん! 知ってるよ!」

 

 というので、聖女プリン・アラモードの目の色が変わる。が、さっきの男達といい今回も知らないのだろうなという気持ちの方が強かったが、アテもないので「じゃあ案内しなクソガキ」と言うと「うん! いいよ!」と自然に聖女プリン・アラモードの手を引くので、とりあえずついていく事にした。

 聖女プリン・アラモードは相手が嘘をついていようが、襲われようが何があってもどんな状態でも圧倒的な力でねじ伏せる事が出来る。

 

 グゥウウウ。

 と聖女プリン・アラモードのお腹が鳴った。

 

「お姉ちゃん、お腹すいたの?」

「あぁ? ああ」

「これ一緒に食べよ! 動物のビスケット!」

 

 箱に入っているお菓子を取り出して、それを恵んでくれる。聖女プリン・アラモードの知らない動物の形をしているビスケットを見つめながら口の中に放り込む。

 サクサクといい音で、味も悪くない。

 

「うめぇなこれ」

「でしょ! お姉ちゃん、もっと食べてよ」

「あぁ? てめーのだろ。今ので十分だ。で? 魔王の奴はどこだよ? さっさと教えろやコラ」

「魔王様はねぇ! 僕の家にいるよ! お姉ちゃん、魔王様のお友達なの?」

「はぁあああ? 私が魔王と友達なわけねーだろガキ」

「僕はガキじゃなくて空汰だよ。お姉ちゃんは?」

 

 ッチと舌打ちする。聖女プリン・アラモードは子供が苦手だった。キラキラした目で自分を見つめ、よく喋る。

 意味不明な行動、そして提案をしてくるのだ。

 

「お姉ちゃん、今日僕の家でご飯食べて行きなよ! 僕のお姉ちゃんの料理すっごく美味しいよ! ね! いいでしょ!」

 

 そしてすぐに懐いてくる。面倒臭い。そんな事に付き合ってられない聖女プリン・アラモードは、

 

「もういい。もうめんどくせーわ。もう帰っちまえよ……そらた」

「えー、お姉ちゃんと一緒にご飯食べたかったなー! ここが僕の家だから今度はちゃんと来てよ!」

「あー、気が向いたらな」


 そう言って手を振る聖女プリン・アラモード。どこにいくアテがあるわけでもないが、適当に歩いていれば双輪に出会えるだろうと去って行こうとする聖女プリン・アラモードに空汰が叫ぶ。

 

「お姉ちゃんの名前教えてよー!」

「アラモードだ。プリン・アラモード」

「ばいばーい! アラモードおねえちゃーん!」

 

 はぁとため息をつく聖女プリン・アラモード。だがしかし、プリンと馴れ馴れしく呼んでくる連中と違い、自分のことを敬意を表してアラモードと呼ぶ空汰の事は悪い気はしなかった。

 

 そして、この空汰の何気ない聖女プリン・アラモードを夕食へ招待した事で帰って行ったのは、魔王様と聖女様の激突を避けるという奇跡を起こしていた事を誰も知らない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

現代日本に召喚された異世界の魔王様は魑魅魍魎相手に無双したりする アヌビス兄さん @sesyato

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ