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@Ichiroe
第1話
異世界はそんな生ぬるいものじゃない、転生者にとってはマンガやアニメの世界にいるような非現実感があっても、現実であることが変わらない限り、侮るような行為は慎むべきだが。それがわかっていないままで死んだ転生者はもう、何人もいた。
阿佐ヶ谷 祐介。僕と同じ交通事故で命を落とした俺の幼馴染の名前だ。なんの因縁かわからないが、気づいたら、彼と異世界の森で肩を並べている。
《残酷》
「……俺達、何故まだ生きてるんだ?修学旅行に乗っていたバスが急にバランスを崩して、崖から落ちたんだよな!?祐介」
「あ、ああ。僕もそう記憶している」
「じゃあなんて体に傷ひとつないんだ?!」
祐介のやつはそう言いながら、少し神経質に自分の手足のあちこちを視認する。
彼がそんなに取り乱しても無理もない。前秒まで、僕らは死ぬ確定と思われる事態の中にいた。しかしまるで瞬間移動したかのように、目の前の景色が変わった。さすがの僕もすんなりとこの状況を呑み込めない。辺りを見回すかぎり、バスみたいなものは見付からなかった。それところか、見たことのない、巨大といえる程の杉並木がたくさん生えて僕らの周りに聳え立っている。その高さを伺おうとすると、上空の視界は、一面の緑に覆われた。
「すごい……」と思うわず口に出したが、僕はただその壮麗さに見惚れていたんだ。
そんな時に、祐介が大声で言った。
「おい、あれ見ろ!大狼じゃねぇ?!」
彼が指を出した方向へ視線を向くと、ばったりと翡翠の如く緑眼と目が合った。それとは別の方向に、幽かな深緑の光が遠く、樹々の隙間から溢れ出てくる。どうやら、僕らは知らず知らずに大狼の群れに囲まれていたらしい。
「ど、どうするんだい、朧……」
祐介の顔色は真っ青な色になり、五官の形が歪んだ。
「逃げる、逃げるんだ!祐介!」
彼の腕を引張りながら僕は駆け出した。
。。。 @Ichiroe
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