私はヴィーガン!

月猫ひろ

始まり

 実際語ろうと思う程には、人生を塗り替える出来事ではあった。

 しかし今にして思えば、きっかけは些細な偶然でしかなかったかと思う。


 体調が悪かったとか生理が早めに始まっていたとか。

 重大な事ではあったけど、特別な事ではなかった。


 私は晩御飯を食べている時に、急に吐いてしまったのだ。


 口にしていたソーセージが男○器みたいだなと思ったら、それまでに咀嚼したものが一気に喉をせり上がってきた。

 喉奥に射○される逆回しのような感触。これを自由にできるのなら、それは傲慢にもなるかと感じながら、惨めに吐き続けた。


 カレーの中に戻してしまったので、ルーと吐瀉物が混じり合って見てられない色になる。

 汚物が飛び散って、服や机を汚していった。


 私の泣き声と母親の怒号が飛び交い、リビングは地獄の様相になる。

 自分から生まれたくせに臭いが不快に溜まり、気分が一気に沈み込んだ。


 それがきっと始まりの日だった。


 次の日はハンバーグを食べようとしたけど、全く食欲がわかなかった。

 その次の日はつみれを目にしただけで吐いてしまった。


 なんだかニワトリを生きたまま押し潰して、すり潰して、こね回して焼き上げた気味の悪さを感じたのだ。

 いや実際に何かを訴えかける眼球だった。

 それは間違いなかったと、今となっても言い切れる。

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