第18話 ラースの森特別演習
5日間の特別訓練を終え、ついに特別演習当日。
俺たちは朝4時30分にグラウンドへと集合し、引率教師であるダリア先生 セルニョル先生 アダムス先生が俺たちの前に立つ。
奥にはアレフ校長の姿もあった。
各リーダーによる点呼を終え、全員の異常の有無をダリア先生に伝える。
ダリア先生は、普段からは想像もできないような大きい声で
「お前ら!!準備はできてるかーー」
と、問いかける。
このような問いかけには 「はい!!」 と元気よく返答するのがお決まりだ。
3回ほどの問いかけに、俺たちはその都度返答をし、ダリア先生はうんうんと頷きながら今回の特別演習の概要について話し始める。
「ラースの森までは、飛行魔法を使用して向かう。到着次第、各クラスごとに分かれ、引率教師の指示に従え。その都度各リーダーは班員の健康状態を掌握するように」
続けて
「1日目は、寮や学校とは違う、非閉鎖的な空間を楽しめ。これは魔法をより具現化するための訓練だ。ヨーイドンの様な号令がかかる授業とは違う。各人が意思を持ち適切な状況で魔法を使用する様に」
そう、1日目は基本的に魔獣との遭遇は低いため、あくまで慣らし運転の様なものである。1日目から班行動の様な少数で動くことになると緊張や不安で動きも鈍るだろうしね。
「質問がなければ、各人飛行魔法の準備をせよ」
その号令と共に各リーダーはくるりとこちらを向き、俺たちのリーダーアリアは
「いつも通りやれば大丈夫よ。さっいきましょ」
と言った。
オースティン魔法学校では、卒業生の約5割近くが軍へと志願する。だからこそ号令も規律も少し軍に近いものはあるのだが、あくまで俺たちは学生であって、進路を決めるのはまだまだ先なのだ。そこまでガチガチになる必要はない。
俺の後ろから班員である、ミハ シャーロット アリス ミーシャが各々
「あ、うん! 行こう」
「楽しんでいこーね! 皆んな!!」
「ミーシャ、はぐれたらダメだよ」
「分かってるよ!」
と言った。
いざ飛び立とうとした時、校舎から わっ! と歓声が上がった。
上級生や、今回の演習に参加しない教員達の姿が見える。
「みんなーー怪我しない様にねー」
「緊張するなよーーー」
「頑張れー!!」
など、思い思いの歓声が聞こえた。
ダリア先生が 「飛行開始」 というと俺たちは飛行魔法を使う。
高度50メートルまで一気に上げ、そこからラースの森へと向かったいく。チラリとグラウンドの方を見たが、遅れた生徒はいない様だった。
ラースの森までは約10分ほどで着く見込みで、そこまでは班でまとまって向かう。
他の班では、笑い声や緊張の声などが聞こえてきた。
俺も班員の緊張をほぐしてやるかなとパッと後ろを向き下がろうとすると、襟首を引っ張られ視線を前へと戻される。
「ちょっと!前向いてないと危ないでしょ」
「じゃあ君はどうやって俺が後ろを向いてることがわかったんですかねえ」
俺たちの班のリーダーとして先頭にいたアリアが、バツが悪そうにプイッと再度前を向く。
「緊張してんの?」
「してないわよ! あんたこそ緊張してんじゃないの?」
「俺はまーたっく。この位ならアリアと話す方が緊張するかな」
「どーいう意味よ!」
俺は、ははははと笑い、再度後ろに視線をずらす。
後ろでは班員の4人が楽しそうに話していた。
緊張は無さそうだな。
むしろ……
「アリア、実はちょっと緊張してるだろ」
「なっ、なによ」
「ははっ無理もないさ。リーダーとはいえ、周りの生徒とは変わらない2年生だしね。プレッシャーのかかり方も俺たちの比じゃないだろ」
「貴方時々鋭いわね……」
アリアは少しの間黙り、文句でもあるのか!と言った表情で再度こちらに話しかけてくる。
「ええ。してるわよ緊張! でも緊張してても関係無いわ。任された仕事をするだけだから」
「アリアらしいな。いざとなったら皆んなもいるし、そんなに気張んなよ」
「そうね……」
急に静かになったな。
すると前から、
「降下用意ーーー」
と聞こえた。
俺はくるりと振り返り、降下用意ーと復唱。
着陸地点はラースの森の入り口の広場だ。
俺たちは無事着地を成功させ、班ごとに整列し無事の有無を引率教師へと報告をする。
ダリア先生は各リーダーの報告を聞き終えると、
「それではこれより、ラースの森特別演習を開始する! 各クラスごとに分かれ!」
ワクワクドキドキの特別演習がついに始まったのだ。
7つ星魔法使いの日常 四季 @shiki102095
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