第173話

お互いに中央艦隊は主砲と主砲の打ち合いとなり護衛するように配置していた軽巡洋艦が脱落していく。

それに対してウェルストンの指揮する敵艦隊はほとんどの艦が健在だ。

それはシールド艦を配備しているかどうかの違いだった。

「このままではじり貧ですね。信濃で前に出ます」

マーチェはそう決断をした。

信濃には他の艦には装備されていない強力なシールドが装備されている。

すると相手の砲撃のほとんどが信濃に集中することになった。

「集中攻撃されているけど大丈夫?」

「想定のうちです。信濃のシールドならこれぐらい余裕です」

信濃が盾になることで他の艦が砲撃を行い確実に相手の戦力を削る。

「マーチェ。そのまま維持して」

エルフィンドがそう叫び左翼方向から突撃艦が物凄いスピードで突っ込んでくる。

俊はレーダーで左翼の状況を確認する。

相手の残存艦はあるものの壊滅状態と言ってよかった。

エルフィンド率いる突撃艦はそのまま相手の中央艦隊の腹を突き破って突き進む。

マーチェはその突撃で相手の艦隊が乱れたのを見て指示を出す。

「全艦に通達。砲撃しつつ敵艦に肉薄する。我に続け!」

信濃の中心に単縦陣を組み中央艦隊が突き進んでいく。

そこにウェルストンが通信を送ってくる。

「いや。まいった。ここまで完膚なきまでに叩き潰されるとはね。降参だ」

「降伏を受諾しました。演習に参加した全艦隊へ。演習終了。繰り返す、演習終了」

「ウェルストン卿。お疲れ様でした」

「お疲れ様。演習が終わった所で悪い知らせだ」

「何でしょうか?」

「悪いけどこのまま犯罪者狩りに手を貸してくれないかな?」

「犯罪者狩りですか?」

「うん。中々尻尾を出さない連中でね。大規模に演習したら出てくるんじゃないかと思って仕掛けてみたんだが見事に釣れてね」

「ウェルストン卿。そういう情報は事前に教えておいてほしいですね」

「ごめんごめん。だけど、知っていたらここまで本格的に戦えなかっただろう?」

「それはそうですが・・・」

知っていたら戦力を温存しようとした動きをしていたことだろう。

「はぁ・・・。では、最後までお付き合いすることにしましょう」

「ありがとう。この礼は必ずするよ」

そう言ってウェルストンは通信を切った。

「各艦に通達。艦隊ごとに再集結。終結後、キリス星系へ」

『了解しました』

どれぐらいの規模かはわからないが手伝いをしてほしいということは規模が大きいかめんどくさい相手であることが予想された。

どちらにせよ気を引き締めて向かう必要があるだろう。

「全員、演習の後で疲れてると思うけどもうひと頑張り頼むよ」

俊はそう言うことしかできなかった。

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万能工作艦明石の軌跡 髙龍 @kouryuu000

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