第5話 好きがわからない

  午後からヨッシーの応援に行くので買い物をすませておこうと思ったら、珍しくルナがついて来た。

 ルナは自分好みのシリアルやお菓子をカゴに入れていた。

 レジで精算するとナオは店員から年齢確認をされた。

 お酒?


 あちゃー、ママのような大人でも年齢確認するんだ。

 清算後、袋にチャチャっと入れればばれないと思ったんだけどな。


「ルナ、誰が飲むん?」

「……」

「ちゃんと言うまでママが預かっとく」


 ああ、だから無理って言ったのに。





 ブリュヴェールが銀のソースポットから、添え付けのスプーンで少しずつご飯にかけるのをルナは見ていた。


「ねえ、そうやって食べると、ご飯か、カレーか、どっちかが余らない?」

「だいじょうぶですう。配分しながら食べてますう」

「じゃあ、ルナは全部かける派?」

「うん、全かけ派」

「まさか、ご飯に混ぜ込むなんてしないよね」


 カエデが言うと、とんかつを頬張りながらミカが手を挙げた。


「それ、あたしの食べ方」

「嘘だあ」

「カレーがご飯に絡んで、どっちも余さずに食べられるよ」


 そんな話をしていたら、ブリュヴェールの手元が狂い、白いクロスに黄色い染みが飛び散った。慌ててテーブルの隅に置かれた銀色のナプキン立てからペーパーナプキンを抜いて拭いたが、染みは落ちなかった。


「落ちませんですう」

「いいよ、ルナもクリームソーダこぼしてるし」


 グラスからソーダがあふれ出て、グラスの底に緑色の染みが出来ていた。


 エヘッ、とルナが笑った。


「それでさっきの話の続きだけど、バレンタインのチョコは遼平さんへのカードが入っていてばれちゃったのね」


 テヘッ。

 チョコレートの中にカードが入っているなんて思いもよらなかったルナ。


「可愛く笑えば許してもらえると思ったら大間違い。ヨッシーが可哀そう」


 クイ~ン


「そんな目で見ない」

「でも、その気もないのに余計にひどくない」

「気持ちがないのか~い」


 ルナは食べ残したアイスをソーダにかき混ぜた。


「ルナね、好きとかいう気持ちがよくわかんないんだ」

「えっ」


 ミカが身を乗り出した。


「その人が近づいて来ただけで、胸がドキドキするとか、声を聞いただけでキュンとなったことないの?」

「う~ん、そうだ。ルシアンやアルトにキスされたら嬉しいけど」

「えっ、いきなりキス。それはどこの誰? 外国人?」

「近くの公園にお散歩に来るワンちゃん」

「もう、いい」


 クイ~ン


「ねえ、男女は一緒に寝たら気持ちが変わるって言ってたじゃない」

「えっ、ヨッシーと寝たの?」

「しーっ、声が大きい。で、寝たの?」

「うん、寝たよ。何も変わらないし、でも、温かだった」

「それは湯たんぽじゃん」




          【了】



🏠 るしあんさん、お名前お借りしました。ありがとうございました。

作品 『KAC2023 ~カクヨム・アニバーサリー・チャンピオンシップ 2023~』 VS 🍂作者の闘いの回顧録


https://kakuyomu.jp/works/16817330668171861232



🏠 柊 あるとさん、お名前お借りしました。ありがとうございました。

作品 「いつかの今日」に住む君へ


https://kakuyomu.jp/works/16817330668885625461


注 柊あるとさん、退会されてしまったので作品に繋がらないかもしれません。

残念です。



🏠KKモントレイユさん、前作の『🏠ルナ弾む』のコメントに食堂の様子を書いてくださったので、作中で使わせていただきました。ありがとうございました。



🏠最後までお読みいただきありがとうございました。

お酒の謎は?

ルナとヨッシーの恋の花は咲くのでしょうか?





 


 

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16🏠ルナ恋バナ オカン🐷 @magarikado

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