第4話 バレンタイン
「ルナちゃんは誰にチョコレートあげるの? やっぱりヨッシー?」
「どうしてヨッシー?」
「だって彼氏でしょ」
「彼氏じゃないもん」
あれまと言ってカエデはそれ以上は訊かなかった。
「ミカは憧れの君にあげるのよね」
「うん、今からドキドキしちゃう」
「ブリュは?」
「チョコレートあげません。もらいますう」
「それいい、ルナも欲しい、もらいたいですう」
カエデは小さなため息をついた。
「バレンタインは女の子から男の子にチョコを渡して思いを告げる日なの」
ブリュヴェールとルナはどんなチョコが欲しいかで盛り上がっている。
「だめだ、こりゃ」
「うわっ、すごいチョコ」
ダイニングのテーブルの上に山になっている。
ルナがその山を漁って、
「これが一番綺麗で豪華。本命チョコだな」
と言うと、
「ああ、それはだめだよ」
と一之介が取り上げた。
「えっ、誰から」
「あきこちゃん」
「まさか付き合ってるの?」
一之介はふわふわっと笑った。
「まだ、そこまでじゃない。映画行ってお茶飲んだだけ」
「それって、遼平兄ちゃんいわくデートっていうやつだよ」
「へえ~」
「何の映画みたの? ポップコーンとコーラ買った?」
「ひ・み・つ」
もう何なのよ。あっちでもこっちでもルナの友だちと恋の花咲かせて。
「ただいま~」
「おかえりなさいパパ。パパももらって来たの」
「あっ、ルナ、いくつあるか数えておいて。お返しせんとあかんから」
「大きいのも小さいのも一緒でいいの?」
「うん、かめへん」
ルナは袋から出して数えていった。
「親父がダントツ1位だな」
「ほかの部署からもくれたからな。ナオさんお返しのハンカチはもういいぞ」
「そうはいかへんわよ。こういうのはきっちりお返ししとかんと」
「じゃあ、おれもお返ししないといけないのかな?」
テーブルの上にチョコレートの山を築き遼平が言った。
「リョウは本命さんにだけ返せばええのんよ」
「じゃあ、ユ……」
口を塞がれたルナは、フガフガと遼平の押さえつけた掌をのけようと必死だった。
「お兄ちゃん、ルナを殺す気?」
「おまえはヨッシーに渡さないのか?」
「えっと、このへんからもらってもいいかな?」
「おまえってやつは」
階段を駆け上がって来る足音がして、玄関をノックした。
「何だヨッシーか。ここまで来たんだから勝手に入って来いよ」
「いや、それは。ルナちゃん、ぼく都大会に出場が決まった」
「おめでとう。頑張ってね。はい、これ」
ルナのやつ、テーブルの上のチョコレートを本当に渡しやがった。
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