しりとり縛りの物語

わをん

ただの1日ここにあり?

 隣人がある日、こんな相談をしてきた。

「助けてくれ。霊が、何かおぞましいものが、俺の部屋に出るんだ」

 大丈夫だろ、杞憂だ、そんなわけはないと思ったが、気になるので彼に導かれるままに部屋を訪れた。淡々としたその部屋はなぜか薄気味悪く、意外にもなにかが出そうな感じだった。確かにこの部屋は不気味だが、そこまでおびえるのは少し大げさなのではないか、と伝えると隣人はこう言った。

「他人のことになると、霊が出たと言っても適当に済ますんだな、自分の時は必死にやっていたくせにな」

 なぜ、どうして、そんなことを知っているのだ。断片的な記憶しか残っていないが、あれは三年前。駅から家へ帰り玄関の戸を開けると突然電気がついた。たわけ、そんなことあるのかと一般の人は思うだろう。嘘だと思うなら信じなくてもいいが本当にあったことなのだ。誰かが家に潜んで何かを企んでいるに違いないと考えると、たちまち怖くなった。助けを呼ぶという行為を恐怖と好奇心がそれを拒み、一人で探した挙句家にはなにもいなかった。ただの自分の勘違いが引き起こした愚行だとは思ったが念の為に部屋を祓ってもらったのだ。誰にもそのことを言ってないはずなのに何故か隣人は"それ"を知っていた。たちまち怖くなってきた。ただ、ある考えが頭をよぎる。留守にしていたあの時に、私の部屋に忍び込んでいたのか、隣人は!張り詰めた空気の中、その沈黙を破るように金属音が響いた。たちまち後ろを振り向くと金属バットを私の頭めがけて振り下ろそうとしている彼がいた。

「助けてくれ、とでも言うと思ったか。」

 空手を小さい頃からやっていて助かった、私はすぐさまバッドを防ぎ彼を拘束した。鍛錬を積めば何事もいつかは実を結ぶものだな。何もこんなところでそれを実感しなくてもいいと思うのだが。ガクンと倒れた彼を横目に、私は警察へ連絡した

。対応してくれた人達はとても丁寧な人で、あの不法侵入野郎を引っ張って行ってくれた。

 ただの日ではない、そんな一日だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

しりとり縛りの物語 わをん @kaerukunn

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ