出席番号5番 久遠
うちは、5番の久遠。
部活はテニスしてて、そこそこ勝てる方だとは思う。クラスでは一軍っぽい立ち位置で、周りかわいい子ばっかりなんだ。クラスの男女は大体喋れるし、コミュニケーションは得意な方なんだよね。先生とも先輩とも仲良いし。
そんなうちは、堀内さんが羨ましい。
うち彼氏できたこと無いの。好きな人はできたことあるけど、成就したことない。でも、誕生日のお祝い、クリスマスのデート、毎月の記念日とか、周りが幸せそうなのを見て、すごく素敵だと思う反面、焦る。うちとあの子たちに大きな差ができていくようで、とても不安になる。かといって、誰でもいいわけじゃないんだよね。もちろん、お互い好き同士で、幸せなカップルになれたらいいな、と思う。友達もいるから、遊び相手がいないわけじゃないけど、やっぱり恋愛じゃないと満たすことができない寂しさがある。部活帰りの一人の帰り道、夜寝れない時、休日に家でゴロゴロしている時。そんなふとした時に虚無感と同時に、彼氏がいたらな、と考えてしまう。
堀内さんは、モテる。同じクラスになった男子は必ず惚れると言われているし、他クラスや他の学年の人から告白された、という話も聞く。女子のうちから見てもすごくかわいいし、なんだか守ってあげたくなる。そんな堀内さんだから、彼氏に困ることなんてないんだろうな。告白されるから、それをOKすればいいだけの話。もし好きな人がいたとしても、振り向いてもらうのなんて簡単な気がする。だって、モテるもん。選び放題なんだろうな。うちとは大違い。
うちだって、友達と遊ぶ時はちょこっとメイクするし、よく話す方だし、クラスの中心にいると思ってる。太ったな、と思ったらお菓子我慢するし、テスト勉強だってしてる。部活だってよく先輩にジュースおごってもらえるくらいには好かれてる。なのに、彼氏だけできない。うちも、一緒の時間に帰れるかそわそわしたいし、同級生があんまりいない場所まで行ってデートしたい。手だってつないでみたいし、その先もしてみたい。周りがそういう話をするたびに、自分の経験談として話せるエピソードが何も無いことが、すごく、すごく、むなしい。このままで高校生活終わっちゃうのかな。
だから、だからうちは堀内さんが羨ましい。
「非リア」という言葉があります。リアルが充実している「リア充」の対義語として用いられますが、大抵は恋人がいない人に対して使われます。なぜ、恋人がいる人がプラスで、いない人はマイナスの分類をされるのでしょうか。私は、恋人が欲しいのではなく、恋人がいる自分というステータスが欲しいからだと思っています。自分には愛してくれる人がいる、その安心感が欲しいのではないですか。だからこそ、恋人がいない状態は欠陥している、「非」充実と捉える。果たしてそれが正しいのかどうかは、当人にしかわかりません。
「高校のうちに遊んでおけ」この言葉を嫌というほど耳にしました。大人になってからの方が遊べるのに、と思っていました。しかし、不可逆性の時間の中で、「高校生だった私」という存在になることは2度とできません。今、制服を着て遊ぶことも可能ですが、あの頃には戻れない。後悔は必ずすると思いますが、今あなたが本当にしたいことは何か、考えてみてほしいものです。
あの子みたいに 林凛 @nattouonnna
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。あの子みたいにの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます