第2話 エラー

「誰?」

 ベッドから弱々しい声が聞こえる。

「え、いや、それはこっちも聞きたい……んだけど……」

「横山君?」

「うん」

「話すの、すごく久しぶりだね」

「なあ、あのさ………」

「私ね、実は海外旅行中に心臓移植して………それでも、ダメだったの。でも、どうしても、高校だけは………卒業したくて、だから……パパとママに、買って貰ったの。この子は、海外の研究所で、開発されていたアンドロイド」


 どうみても人間にしか見えない。クラスの誰ひとりとして気が付いてもいないだろう。あまりにも精巧なロボット、いや、アンドロイドというらしい。


「皆には、秘密にしてね」

「い、いいけど………」


 しかし、この出逢いが思わぬ出来事を引き起こすとは、俺らは思ってもいなかった。



「エラー」



 ポツリと呟いた花井アンドロイドが、箒を片手に休み時間の教室の真ん中で立ち尽くし、虚空を見つめている。


 その様子の異常さにざわつく教室。


 そうだ、〈休み時間の掃除のプログラムのインストール〉の真っ最中だった。俺が見つかったのは。

 あの時に俺が闖入したせいで、「休み時間のプログラム」が中止し、バグったのだろう。その場で突っ立っているアンドロイド花井の手を思わず掴み、

「こいつ調子悪そうだから!! 保健室連れて行く!!」

 ダッシュで教室を飛び出した。走りながら

「エラー」

としか呟かない美人委員長。保健室なんて役に立つもんか。

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