暁のアビス
ツバキ丸
暁のアビス 本文
今日は、暁の空が美しい。
空は淡い紺色から綺麗なオレンジ色に移り変わり、地平線から太陽がチラリとのぞいている。
………この真っ黒に染まった生を断つのに、ピッタリの日だ。
殺しにかかる母や、痛めつけるクラスメイト。
そんな奴らから、逃げて、逃げて、逃げて………。
そんな、思い入れのあるこの土地で。
――――一体全体、もうどうしたら良かったのだろう。
今までの日常を思い起こす。
『――――アンタなんか、アンタなんか産まなきゃよかった‼︎』
青黒く内出血した、自分の頬を触る。
僕が実の母にされた事といえば、自分の存在を全否定されながら殴られ続けたことくらいだ。父は……元からいない。
『お前何威張ってんだよ⁇ 黙って早く金持ってこい‼︎』
傷だらけになった、自分の身体を見る。
クラスメイトに殴られた跡。教師は……勿論助けてはくれない。
「―――もう、良いよね。スミレ。」
逃げる際に持ってきた、双子の妹のスミレとのツーショット写真を眺める。
いつの間に、居なくなって終ったんだろう……。そんな哀しさが、写真の中で生きているスミレを見るたびに芽生える。
「もう、辞めにしよう。」
僕は、逃げた先の沈下橋から飛び降りる。
走馬灯の様に、忘れていたこの橋での思い出が浮かぶ。
今はもう可笑しくなってしまった母さんや、もう何処かへ居なくなってしまった父さん。そして、幸せそうに笑うスミレ。
懐かしいな―――。
水の中で冷たくなっていく、僕の傷だらけの身体。
そして、僕は何度も考える。
―――――何で、スミレは僕のモノになってくれなかったんだろう?
………何で、殺されるまで抵抗しなかったんだろう⁇
スミレの遺骨を持ったまま、僕は考える。
逝ってしまった今でも、それだけは………。
――――それだけは、解らなかったよ…。
『 ね ぇ 、 ス ミ レ ? 』
ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ……………。
水ノ中で、【永遠に】笑イ声が響いテいタ。
暁のアビス ツバキ丸 @tubaki0603
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