監禁幽霊

高黄森哉

監禁幽霊


 これは、私が引っ越しをしたばかりの頃、体験した心霊現象です。


 引っ越しをしたのは十二月の中旬でした。いやに寒い日で、丁度、このころ、前の住人が亡くなったそうです。


 新居の扉は、ひんやりしていました。思えば、それは異様な冷たさでした。まるで、私の侵入を拒んでいるかのような。


 鍵を開けて、玄関で靴を脱ぎ、廊下を抜け、居間へ入ります。居間には、大量の段ボールが積みあがっています。


 まず、災害用の装備が入った段ボールを、片付けることにしました。災害はいつ、なんどき、やってくるかわかりませんから。


 一番小さな部屋へ、段ボールを五つ運び入れます。この部屋は異様に冷たく、靴下越しに床の温度が浸透してきます。そんな、板張りには、黒い染みがありました。


 あとから、判明した話ですが、前の住人は、ここで亡くなったそうです。


 部屋から出ようとしたとき、がたん、という音がしました。そういえば、モップを壁に立てかけておいたのです。もしや、と思い、扉を開こうとしました。


 嫌な予感は、的中していました。モップがつっかえとなってしまったのです。助けを呼ぼうにも、スマートフォンは、居間に置いたまま。


 どうして、こんなことに。モップは、向こうに向けて、斜めにしておいたのに。なにか、よからなぬ力が働いたに違いありません。


 その時、扉がノックされました。助けが来たのかと、喜びましたが、それは違うようでした。その扉を叩く音は、次第に強まっていきます。まるで、こじ開けようとしているかのように。


 私は、それから、三日間、災害用の食べ物で過ごしました。そして三日目に、兄が様子を見に来て、救出されました。


 救出されてすぐ、私は兄に、部屋になにか見えないか、と尋ねました。彼は、そういう、”見えてはいけないなにか”、が見える体質なのです。彼は、いいました。


 部屋の真ん中に、餓死した幽霊が見える。


 私の責任です。私が、あの時、モップを別のところにどけておけば、、、この幽霊は死なずに済んだのかもしれない。


 以上が、私が引っ越してすぐに体験した心霊現象の、その一部始終です。

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監禁幽霊 高黄森哉 @kamikawa2001

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