第4章「部室の中心で円陣を組む」ー2

「ちょっ……ちょい、ちょい……待ちーやー!」


 予想外というか、予想通りの展開に驚いたふたりの術は切れ、廃屋のように変わり果てた部室に突如として現れたくノ一装束を身に纏ったふたりの女に唖然とした豊臣くんが、


「く……曲者よー! ていうか、生徒会長と風紀委員長じゃないのよー!」

 と叫んだので、鞠が、豊臣くんの後ろに瞬足で回り込み口を塞いだ。愛する豊臣くんを護るためなのか、徳川くんが彼の方につま先を向けたのを見た美影は徳川くんの後ろに回り込み口を塞いだ。


「とりあえず……落ち着いて聞いてください。私たちは、貴方たちに危害を加えるつもりは毛頭ありません……お互い、知られたら困る秘密を知られた者同士、どうか、人助けだと思って、私たちを助けて頂けませんか?」


 美影と鞠は、ふたりに事の経緯を説明したが、2人がくノ一であるということを中々信じてもらえなかったので、残り僅かのチャクラで実際に“影分身の術”をやってみせることで、ようやく、彼らから話を信じてもらうことができた。


「それで、その“チャクラ”っていうのをチャージするのに、俺はどうしたらいいの?」


 徳川くんが、美影と鞠に訊いた。


「正直、もう……私たちのチャクラは……残り1%という、非常に危険な状況です! 先程おふたりがされていたような熱い抱擁を、徳川くんと鞠と私の3人で交わすしかありません!」


「ちょっと……そんな淫らな徳川くんの姿を指を咥えて見てるだけなんて、私、耐えられない!」


 なかなかに嫉妬深いらしい豊臣くんが、変態くノ一の懇願を拒否した。


「あー、もー、じゃあ、4人一緒に円陣を組むような感じで、徳川くんの“ぬくもり”を分け合いましょう!」


 ボロボロになった部室の中心で愛を……否、円陣を組む、男女4人……


(ああ……ぬくい……人肌って、なんて、心地いいんだろう……)


 こうして、2人の変態くノ一のチャクラは急速にチャージされ、何とか窮地を脱することができたが、“ぬくもり”を得て火照った身体とは対照的な冷ややかな空気が4人の間には渦巻いていたとさ。


【おしまい】


※追記※ 

 美影と鞠が廃屋にしてしまった部室は、チャクラを回復した2人の忍術で元通りに修復しました。

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ぬくもりを欲するくノ一 喜島 塔 @sadaharu1031

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