第4章「部室の中心で円陣を組む」ー1

 部室に入って来たのは、なんと、噂の徳川くんと豊臣くんだった。


 美影は、ふたりが入って来ると同時に、部室全体に結界をかけ部室の外に出られないようにした。鞠は、“瞳術・裸眼どうじゅつ らがん”で、滅茶苦茶になった部室が元の状態に見えるように仕掛けた。


―― 鞠、私の声が聴こえるか? この術も、保って5分が限界だ……


 美影は、“忍法・以心伝心いんぽう いしんでんしん”で鞠の脳に語りかけた。


―― ええ、聴こえるわ。私も、5分が限界って感じね。


―― 鞠、術が切れると同時に、例の作戦に出るぞ!


―― 御意!


 ふたりの変態くノ一が部室に忍びこんでいるうえに、術に掛けられているなどとは微塵も疑っていないふたりのイケメンは、無防備な様子で会話を交わしている。


「はあー……あなたは女の子たちにモテモテだから、ファンの女の子たちを振り切るのに、いつも苦労するわ……」

 と、豊臣くん。


「苦労を掛けてスマナイ……だけど、あのファンの子たちの半数くらいは君狙いだよ? 俺だって気が気じゃないんだ」

 と、徳川くん。


「あら? それってヤキモチ?」


――おい、鞠……なんか、ふたりの会話、様子がおかしくないか?


――ええ、なんだかムフフな感じがするわね……もう少しだけ様子を見ましょう。


 変態くノ一たち不安をよそに、徳川くんと豊臣くんは、ムーディーな雰囲気に包まれていた。


「何はともあれ、やっと……ふたりきりに……なれたね……」

 そう言いながら、徳川くんが豊臣くんは熱い抱擁を交わし、見つめ合うふたりは唇を重ねようとしていた。

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