第5/5話 ラスト・シーン
「じゃあ、寝よっか」
「あ、うん」
大きなベッドでは余裕で二人で寝れる。
「よいしょ、よいしょ」
彼女が一人でベッドに横たえる。
「ささ、お隣どうぞ。あいてますので」
「では、お言葉に甘えて」
「ちなみに、エッチなことしちゃ駄目だからね」
「そうですね」
二人で並んで寝る。
すでに心臓がバクバクと鳴っていた。
「じゃあ、はい、ハグぅぅぅ」
「お、おい」
「ごめんね。私ぬいぐるみ抱いてないと寝れなくて」
確かにベッドの足元には巨大なぬいぐるみがいくつか置いてあった。
「今日は登君がぬいぐるみね」
「はい」
どうやら俺がぬいぐるみらしい。
ぎゅっと抱き着いてくる。
柔らかい。抱きしめられて温かい。
それからなんだか気持ちいい。
人間って人肌に包まれると、こういう感覚なんだな。
「すごい。もう、ぬいぐるみじゃ我慢できないかも」
「そんなに?」
「うん。温かいんだもん」
「お、おう」
「おやすみなさい、登君」
「おやすみ、その、ミリアちゃん」
「うん。名前でよんでくれてうれしいよ」
「おう」
めちゃめちゃ緊張する。
お互いの心臓の音が聞こえそうだ。
でもこれから何をするかって寝るだけなのだ。
こんなんじゃ目が冴えて寝られないよ。
羊が一匹、羊が二匹、羊が三匹。
羊よりも温かいんだから。
それにいい匂いがするんだ。
女の子の匂い。なんともいえないようなちょっと甘い匂い。
とても落ち着く。
気が付いたら、眠ってしまっていた。
夢にミリアちゃんと俺が出てくる。
なぜか俺たちは鎧を装備していて、俺は剣を振るっている。
敵のゴブリンたちを千切っては投げ、千切っては投げ、姫をお守りするのだ。
そして、ゴブリンをすべて倒した後。
「好きです……キスしてください」
姫からの求婚であった。
「もちろんですとも、姫」
俺たちは再びキスをした。
ぱっと目が覚めると、俺の口は彼女にふさがれているところだった。
現実のキスが夢に影響を与えているのだろう。
「あっ、んんん、ちゅっ、ちゅちゅちゅ」
バードキス。小鳥がさえずるように優しくついばむようなキスだ。
必死に何回もミリアちゃんがキスをしてくる。
まるで、キスをしないと眠れないかのように。
そのうち彼女の目はとろんとしてきて、いつの間にか眠ってしまっていた。
眺めているうちに俺も再び眠りに落ちた。
◇
朝。スズメが鳴いている。
朝チュンではありませんか。
「はぁ、朝チュンしちゃった」
「ふふっ、キスいっぱいしちゃったもんね」
「あんなにキス魔だと思わなかった。意外」
「だって、どうしてもしたくなって。我慢できなかったんだもん」
かわいいことを言ってくれる。
「でも、今日も学校だね」
「そうだな」
「時間ギリギリだけど、大丈夫? 朝ご飯食べるよね」
「やっべ、もうそんな時間か、起きる」
「はい、起きまーす」
二人でベッドから飛び出すと、急いで背中合わせで着替える。
なんだかもう同棲しているみたいで、ちょっと照れる。
二人で並んでご飯を食べる。
……手をつないで、学校へ登校する。
なんだか幸せだった。
ただ見ている事しかできないはずの高嶺の花。
それがAIガチャによりSSRを引いて、恋人実習のパートナーになる。
今でも夢みたいだ。
まだまだ立ちはだかる障害も多い。苦労もいっぱいするだろう。
この制度、それでも問題なければ三年間パートナーは継続できる。
そこまで一緒にいれば、その多くは結婚までいくという。
俺たちもそうなれるように、頑張りたい。
「登君、大丈夫だよ」
「その自信は?」
「えらいAIが、相性抜群だって選んだんだもん」
「そうだな……」
AIが信頼できるのか、俺たちは試されるのだろう。
(終)
ペアリング<恋人>実習で学年一美少女の彼氏に平凡な俺が当選した件 滝川 海老郎 @syuribox
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