第15話 異次元の強さ
「いい加減ダメージ受けなさいよ! ———【氷龍】」
「それは無理なお願いだな。生憎俺は痛いのは嫌いなもんでね———【炎虎】」
氷によって創造された白銀に輝く龍と、炎によって創造された真紅に輝く虎がぶつかり合う。
「ふぇぇぇぇぇぇぇ……どんどん結界が壊されちゃいますぅぅぅぅぅ!!」
……何か1番悲惨な状態になってるな、ユミル。
「よそ見なんていい度胸ね———はぁあああああああッ!!」
「うおっ———あっぶねぇ……っ!?」
俺が2つの大魔法と泣き叫ぶユミルに気を取られていた隙に、気付けばレティシアが俺の眼前にまで迫ってきており、そのままの流れで強烈な横薙ぎが繰り出される。
咄嗟に飛び退いて避けるが……まるでその動きすら予測していたかの様に、同タイミングで追撃してきた。
おいおい、嘘だろ……!
今度は避けられない事を悟り、俺は自分の身体とレティシアの剣との間に剣を滑り込ませて防ぎ、力任せに弾き返す。
「取り敢えず離れてもらおうか……!」
俺はノータイムで【炎剣】を発動。
背後に出現した100を超える無数の魔法陣から炎の剣がレティシア目掛けて射出される。
炎剣は空を駆ける様に一直線に向かうが……。
「ふんっ、この程度じゃ私を止められないわ……!」
レティシアを守るように地面から巨大な氷の壁がそそり立ち、炎剣を防いだ。
炎剣は氷の壁に衝突すると爆発し、辺りに爆音が鳴り響き、爆煙が立ち込める。
———これを待っていた。
俺は全身に魔力を纏って身体を強化すると、地面を蹴って弾丸の如く氷の壁に接近し———長らく使っていなかった全盛期の技を使用する。
「———【ブレイブ流剣術:一刀両断】———」
流れる様なモーションから振り抜かれた横薙ぎは、分厚く強靭な氷の壁をまるで豆腐の様にスパッと上下真っ二つに斬り飛ばす。
そして斬り飛ばされた氷の壁から現れたのは———俺に向けて手を翳し、1度の訊いたことのない魔法名を唱えるレティシアの姿であった。
レティシアの言葉と同時に俺中心として半径20メートル程の魔法陣が地面に浮かび上がり、更に逃げ場を無くすように転移無効付きの結界を全方位に張られる。
「……あー、マズい」
俺の呟きと同時に———。
「食らいなさい———【
空間内全てのモノが凍りついた———。
「———だ、大丈夫なんですか!? 完全に凍ってますよ!?」
ドーム状に囲われた結界内が全て氷の彫刻の様に固まっている。
普通の人間なら凍死か窒息死で確実に命を散らしているであろう惨状に、ユミルがテンパりながらレティシアに縋り付く様に言うと、レティシアは少し悔しげに返した。
「大丈夫よ。ほんと、ちょっとは食らいなさいよね……私の全力だったんだから……」
「———【ブレイブ流剣術:爆炎斬】———」
突如氷の中心部から真っ赤な光が発せられたかと思うと———次の瞬間には空間内の氷が砕け散った。
凍っていて身動きも取れず、空気すらない空間内で言葉を発し、尚且つ剣を振るえるというそのあまりの常識離れした出来事にユミルは開いた口が塞がらず、呆然と氷の会った場所を見つめていた。
その出来事を引き起こした張本人であるレオンは———。
「いやー、今回ばかりはマジで死ぬかと思ったわ」
———まるで何も受けていなかったかの様に全くの無傷であった。
勿論服はびしょびしょで、髪も水が滴るほどに濡れているが、それだけ。
レオンは剣を消しながらレティシアの前に歩いて行くと……そっと頭に手を置いた。
「強くなったな、レティシア」
「……ふんっ、余裕勝ちした人に言われても」
「いや、マジでめちゃくちゃ危なかったぞ? 後少しでも結界の展開が遅れてたらお陀仏だった」
「えっ?」
「ええええええ!? レオン様、本当に大丈夫なんですか!?」
レオンの言葉に少し驚いたように声を漏らすレティシアと、盛大に驚いて大声を上げるユミル。
そんな2人を見ながら、楽しそうにケラケラと笑うレオン。
そして———。
「……異次元」
「本当にね」
「……悔しいですが、天と地の差……なんて言葉すら今回ばかりは不釣り合いと言わざるを得ませんね……」
陰から3人を見る生徒達の姿があった。
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お久しぶりです。
これから頑張ります。
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