第5話 反撃の始まり

「遅かった!」


 俺たちがなんとか駆けつけた時には既に電波塔は破壊され、寄宿舎も軍学校の敷地までが半壊していた。


「クソ、正規兵もいたはずだろ!?なんで根こそぎやられてやがる!」


 ザント先輩の言葉はもっともだが、相手が悪すぎた、恐らくはあの半魔が原因だろう。


「生き残りがいるかだけでも確かめるぞ、コクピットが無事なものだけでいい」


 無惨な姿を晒す多数のタイタニアを見ながらガイウス先輩が至極冷静な判断を下す。


「……あいつら、もう居ないんですかね?」


ザント先輩が少し怯えながらそう漏らした。


「電波塔を破壊した以上ここに軍事的価値はほぼ無い、おそらくは国境警備は抜かれた上でこの塔を破壊しに来たんだろう、撤退時の後顧の憂いを残したく無かったんだろうな」


 ガイウス先輩の読みは多分正しい、奴らの本来の目的はここのさらに奥、パリパスにある魔鋼採掘基地だろう。


「……はあ、なんだっておれらこんな最前線で訓練うけてんすかね?」


 そりゃ、国からしても兵が足りないからだろうな、いざと言う時学徒であっても駆り出すためだ。


 それでもここが戦地になる可能性は低いはずだったがどうやらあちらが協定破りをした時点で状況は変わったと見ていいだろう、最悪だ。


「……先輩方、見てくださいコレ」


 大破した正規兵の乗っていたタイタニアの背にあるのは最新式のレーダー搭載機構だった、幸いこちらは無事に残っている。


「……敵さん、これが電波塔に近い役割を果たす事を知らなかったか、残して行ったな」


 これは幸運だと言っていい。あちらとしたら痛恨のミスだ、電波塔ほどの距離は通信できないがある程度近づけばパリパスの駐屯部隊にも連絡できるだろう。


「……ガイウス先輩、僕らで奴らを追いましょう、パリパスと連絡がつけば挟撃できるはずです」


「なかなか無茶を言ってくれるな、ライオネル後輩」


「そそそ、そうですよ、私達まだ訓練生なんですよぉ、それが正規兵をこんな風にしてしまうあの半魔相手に勝てるわけ……!」


「リリアン……情け無い事言うな、奴の能力の穴は大体見切った、次は負けねえよ」


 泣き事を抜かすリリアンを軽く叱りつけて、もう一度ガイウス先輩に話をと思っていたら前方の瓦礫が突然持ち上がった。


「そいつぁ、また豪気な話だなひよっこども」


 毛むくじゃらの手足に、長い髭。 

 地妖精ドワーフのおっさんが瓦礫をどかして顔を出す。


「ドテラン親方、生きてたのか!?」


 ドテラン親方……この新兵訓練所のメンテナンス班の長にして元は歴戦の傭兵だったと噂のある人だ。


「は、あんなもんでくたばってられっかバーロィ」


「いや親方頑丈すぎないか……良かったけどよ」


 筋肉達磨、もとい。ガイウス先輩が引くほどの頑強さは地妖精ドワーフの特徴ではあるのだがそれにしてもほぼ無傷とは。


「あんだ、しけた面しやがって……おいまさか、お前らだけか?」


 親方の指摘は多分正しい、もう少し探しても良いが多分、無駄だろう。


「……ち、しゃあねえお前ら、ちょっとこっちこい、BLバーンラインから降りてだぞ」


 親方に呼ばれ、機体を降りてまだ屋根が無事な建物に集まる俺達。


 全員が集まると親方は腕を組み、ニヤリと笑った。


「お前ら、帝国の奴らに泡吹かせてやる気はねえか!」


 親方に手招きされた先、地下格納庫にはまだ無事な武装が山ほど転がっていた。


「どうだ、好きなの選べ……ワシが速攻で取り付けてやる」

 

「ははっ、すっげ高そうな武器だらけじゃん!」


「行くなら持ってけ、んであの礼儀知らずどもに叩き込んでこい!」


──反撃、開始だ。

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異世界機兵BL 九重土生 @gilth

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