精神病棟を訪れた、敬虔な修道士が怪異を目の当たりにするゴシックホラー。難しい題材を難なく扱う筆力と時代考証、手記を巡る方式も魅力的で、ポーやホーソーンなどの雰囲気が好きならそれだけで楽しめます。精神医学が確立されない時代の暗部を詰め込んだ、悪魔か人間かそれよりも恐ろしいものか不明な輪郭が徐々に現れる静謐な作品でした。
まだ怪異が完全には明らかにされていないにも関わらず頭の奥でパイプオルガンの不協和音が音を加えながらえんえんとなり続けているような、ぞっとするうすら寒さを感じました。手記形式で綴られる過去を追体験する形式で語られる物語。少しずつ壊れていく、少しずつずれていく、少しずつおかしくなっていく、少しずつ狂ってゆく、そんな話が一歩、また一歩、背後から近づいてきて、すうと真後ろに立つかのような、まるで百物語のような寒気に襲われます。コワイ……