第35話

「ワシはまだ生きていていいのか」

サラは微笑んでいた。

 男はほくそ笑む。

「なんと嬉しいことか」


 ソウとサラは皆の後ろを歩いていた。

「ソウ、なんで伝えないのですか?」

「そのうち分かるだろうし、こっちの方が楽しいじゃん。サラと僕だけの秘密だよ」

 ソウは口元に人差し指を立てて、いたずらっ子のように笑っていた。

 男の寿命を少しだけ延ばしてやっていたのだった。

  

「これはなんと言う食べ物なのですか?」

 サラは萌に尋ねた。

「これがカレーだよ」

「美味しいから食べてみて」

 とソウが嬉々としながらサラに勧めた。

 サラはしばらく眺めてから、パクと一口食べた。

「これが人間界の味ですか」

「面白いよね」

「はい」

「おじさん、パフェ作って」

「よーし、じゃあ三人で作ってみようか!」


 とんがり帽子の魔法使いと萌は虫を眺めていた。

 じーと眺めている。

 眺めている。

 眺めている。

 眺めている。

 眺めている。

 眺めている。

「お嬢ちゃんは将来有望じゃのう」

「そうかな?」

「そのうち、お嬢ちゃんにこの本を引き継いでもらおうか」

「わーい」

 とんがり帽子の魔法使いは歯抜けの笑顔を見せていた。

 

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魔法中年 精霊の森ととんがり帽子の魔法使い 宮上 想史 @miyauesouzi

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