聖なる夜のアルマゲドン
文壱文(ふーみん)
聖なる夜のアルマゲドン
A.D.2023、クリスマス・イヴ。雪の降り積もる静かな夜。
それは突如姿を現した。
凍てついた白色の体毛に獰猛な深紅の瞳。頭に生えた長耳は到底、可愛らしいとは言えない。禍々しささえも覚える巨大な兎が山の中から飛び出した。
咆哮をあげ、兎は遠目の街に牙を剥く。
空高く跳躍しアパートの屋上を踏み潰した。瓦礫の破片に赤黒い体液が滲んでいる。一向にして、兎の破壊衝動は鎮まることを知らない。
「ワシの命も残り七日。この哀しみを何処へぶつけたら良いものか」
兎は首都へ足を運ぶ。スカイツリーをなぎ倒し、国会議事堂を瓦礫に帰す。モノレールを蹴り壊せば、車体が住宅街へ落ちた。踏み潰されたコンクリートの欠片が道路に突き刺さり、アスファルトに亀裂が走る。
「あと七日。あと七日すれば龍の奴が目覚めてしまう!! その前に、全てを滅ぼしてやる……!」
兎の起こしたアルマゲドンは、わずか一夜にして都心を崩壊させるまでに至ったのだった。
──やがて龍は目覚める。辰年まで、あと七日。
聖なる夜のアルマゲドン 文壱文(ふーみん) @fu-min12
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