いつの間にか囲まれていた

 一月。

 新年を迎えて、ボクが始めにやった事。


「アオ―。お餅食べよう」

「うん。今行く」


 机にノートを広げて、勉強をすることだった。

 結局、ボクは自分のやりたいことがない。

 ないから、大学に行く。


 きっと、間違っているかもしれないけど。

 ハナさんが言うように、思いついたら何でもやってみようと考えた。


 一番、大嫌いな勉強をしている時間は苦痛で、時間が無限に感じる。

 でも、ボーっとしてたら、どんどん周りに置いていかれて、やりたいことが見つかった時に何もできなくなる。


 やりたいことが見つかった時、すぐにでも行動に移せるよう、ボクは学業に取り組んでいる。ノートにボールペンを走らせていると、スマホが点滅した。


「……母ちゃんだ。珍しい」


 スマホを開くと、チャットが届いていた。


『ちゃんと食べてる?』


 ぶっきらぼうな一言。

 ボクは、素っ気ない返事をした。


『大丈夫』


 たったこれだけのやり取りだけど。

 ボクら親子は、これぐらい丁度いい。


「アオ! 家、壊すよ!」

「あのさぁ! いちいち、脅し方が怖いんだよ! 真冬に家を壊すのは正気じゃないぜ!」


 リツが大声で呼び、挙句に脅してくるため、ボクは仕方なくペンを置いた。


「今、行くから!」


 部屋の扉を開けると、冷たい空気が流れ込んでくる。

 階段を下りて賑やかなリビングに行き、ボクは人外達と正月を過ごすのだ。


 童貞を殺すセーターを着たリツ。

 クリスマス衣装のマワリさん。

 相変わらず薄着のワカナさん。


 いつの間にか、周りにいた住人たちの生活は、案外悪くない。

 そして、ボク以外の人間は、いつしか気づくのだろう。


 いつの間にか、周りは人外だらけだという事実に。

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いつの間にか囲まれていた 烏目 ヒツキ @hitsuki333

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