追放魔術師、再起を誓う
XX
TRPGで魔術師をやったらこーゆーことやりそうだよね。
「お前、もうこのパーティから出ていけ」
ある日、私は酒場でパーティリーダーの勇者にそう通告された。
最初、私はわけが分からなかった。
「……何で? 私、パーティに貢献して来たよね?」
ピンポイントで暗闇の魔法を使って敵を行動不能にしたり。
剣に魔力付与の魔法を使って、通常の物理攻撃が通じないワイトやバンパイア相手の戦闘で、あなたたちを戦えるようにしたり。
私は納得できなかったから、今までの私の仕事を訴えた。
こんな有能な私をパーティから追い出す? ありえないでしょ! と。
すると
「……暗闇の魔法ね……最近の私たちの戦いでさ、戦う魔物たちは大体暗視能力持ってるのよね」
活発な雰囲気の、勇者の恋人の女戦士がそう、私に冷たく告げる。
そしてそう言いながら
「それに、冒険の過程で、この伝説級の魔剣がさ……私と彼、2人分あるのよ」
腰の剣を抜き放つ。
その剣は魔力の青い光を帯びていた。
「……つまり、もう暗闇の魔法も、魔力付与の魔法も要らないの」
冷笑を浮かべて。
……ああ、彼女は私のことが嫌いだったんだな。
それを思い知らさた。
軽く絶望しながら
さらに訴えた。
「でも、私は火球爆裂の魔法や、電撃殲滅の魔法も使えて……!」
すると
「魔法使いの真価は、砲台としての運用方法じゃないんですよ」
清楚な雰囲気の聖女……僧侶の彼女が口を挟んで来た。
私を見るその目は、汚らしいものを見る目だった。
「それだけだったらね、魔力の杖を購入すれば代用が可能なんです。真価は、考えて貰うこと。そしてどうすれば目の前の事態を好転できるか、それを提案することなんです」
そんな……!
私が考えてなかったっていうの!?
これまで、サポート魔法でも活躍していたのに!
そう訴えたら
「お前は何も考えていない」
吐き捨てるように勇者が言った。
「どこがよ!?」
「……まず、骸骨兵創造の魔法!」
骸骨兵創造の魔法……生物の骨を素材として、骨のゴーレムを作る魔法。
習得するには魔術師の学院でお金を積んで、特別講習を受けないといけないんだ。
その魔法を習得したとき、とても嬉しかったなぁ。
「それが何か!?」
半分キレながら、涙を堪えてそう叫ぶと
「お前はその魔法を習得してから、敵を嬉々として殺すようになったよな!?」
……それの何が悪いの!?
何の法律にも触れてないじゃない!
魔物は殺す。
当然のこと!
そしたら、勇者は言いがかりをつけてきた。
「お前が敵を殺すのは、骨が欲しいからだ」
そうだけど!?
骨が無いと骸骨兵創造の魔法が使えないし!
何も悪いことしてない!
「……それが生命への冒涜だと考えないのですか?」
僧侶がそう、寒いことを言って来た。
何をモラリストを気取ってるの?
あなただって敵相手にメイスで急所を叩くことはしてるじゃない!
どうせ殺すんだから、あとの死体をどうしたって……!
すると、勇者の隣から口撃が飛んで来た。
「あなたが最悪なのは……盗賊だとか邪教神官だとかが相手でも、行動方針が変わらないことなのよ」
心底見下した目で、私を見てくる女戦士。
……馬鹿のくせに!
人間を殺せるチャンスが来たときに、ハッスルして何が悪いの!?
人間の骨を得るチャンスなんだよ!?
酷い……酷過ぎる……!
言いがかりだ……!
「それに」
さらに勇者は言った。
ものすごい嫌悪感の籠った声で
「……変身魔法を覚えてから、お前さ……近隣の童貞少年を全員兄弟にしたよな?」
……好きなものを食べて何が悪いの?
何? 嫉妬?
自分が言うほどモテないから?
みっともないですよ?
あなた勇者でしょ?
あまりにも器が小さい……!
「……あなた、元男のくせによくそんな真似ができたよね。キモイよ。アンタ」
冷たい目の女戦士からの凄まじい差別発言。
男女差別……!
「あなたの行いは全てが吐き気がします。法律の問題じゃ無いです。お願いだから消えて下さい」
薄っぺらいモラルを振りかざす糞ビッチからの凄まじいヘイトスピーチ。
……偽善者!
私は耐えきれず、ボロボロ涙を流した。
「……あの」
そこに。
年齢14くらいの、幼い感じのそばかす少女がいた。
……魔術師の衣装に身を包んだ。
「ああ、悪かったな」
「歓迎するわ。あなたならすぐ一流に……いや、一流になれるように私たちが指導してあげるから」
「ようこそ……勇者パーティへ」
皆、優しい。
……私とはあまりに対応が違う……!
きっと、この娘は私より仕事が出来るんだ……!
能力主義の温かみの無い最低の環境……!
私がいた場所は、そんな最低の仕事場だったんだ……!
悔しい気持ちを抱えながら、私はそこから泣きながら逃げ出した。
――悪い奴は必ず報いを受ける。今に見てなさい!
再起を、誓いながら。
追放魔術師、再起を誓う XX @yamakawauminosuke
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