束縛のつる
高黄森哉
つる
つる性の植物に覆われていた。足が地につかない。ちゅうぶらりん、宙に浮いている。植物に持ち上げられているのだ。一体、どうしてこんなことに。そもそも、ここはどこなの。
ここがどこだかは、視界いっぱい魔緑なので、わかりません。確か、草原で遊んでいたはず。そして、それから、、、。どうしたのだろう。今、わかることは、私がつる性の植物に囚われているということだけだ。
植物はぎりぎりと、足を締め付ける。右手を締め付ける。手首を締め付ける。腰を締め付ける。胸を締め付ける。顔を締め付ける。左手だけは、大丈夫。左手で、身体のつるを解こうとするが、力が強く、固く、きつく、どうすることも出来ない。
どうしてこんな羽目に。
確か、草原で遊んでいたのだ。それは、キノコ狩りのためだった。おばあさんが、病気になって、彼女は、私をキノコ狩りに行かせたのだ。その時の、解放された気持ちを覚えている。ずっと家に閉じ込められていた。外は危険だというから。
右足のつるを、解くことに成功する。もっとも細いつるで、手で解くことが出来た。ほかの植物の触手は、それを受けて、締め付けを厳しくした。細いつるで、
どうしてこんな羽目に。
草原で遊んでいた。過保護なおばあさんのために、キノコ狩りをしていたのだ。そして、それから、おじいさんに、すれ違ったのだった。彼は言った。ここら辺は、危険だから、向こうにしなさい。
私は、いうことを聞かなかった。だって、向こうにいくなら、日が暮れてしまう。それに、おじいさんは、なんとなく嫌いだ。頑固だから。最近のはやりを知らなくて、私がおしゃれをすると否定する。私は解放されたかった。
右手のつるが外れた。右手のミサンガが、潤滑剤として機能したのだ。ほかの箇所は、一段と、力を強くした。あと四つ。頭と、胸と、腰と、左足。しかし、他の場所は、間に挟めそうな装飾はない。
どうしてこんな羽目に。
危険があるという草原は、そうでもなかった。先に兄がいて、彼は私にこう言った。その靴なら、斜面に行かない方がいいよ。しかし、私はドジではない。いつまでも、いつまでも、私に子供のラベルを貼るなんて、どうかしている。
胸のつるを外す。ナイフを持ってきたのだ。母に危ないと言われたが、ナイフを持っていない方が、この場合、危険だっただろう。腰と頭だけの二点に重量が集中したためか、私の体は大きく下方へと沈み込んだ。しかしまだ地面に足はつかなかった。
ここは、どこだろう。
草原を歩いていて、キノコを探して、斜面を歩いていた。それで、坂の上から父親の声が聞こえた。戻っておいで、そちらは、危険だよ。みんな、私を、がんじがらめにする。束縛のつる。下へと下へと
頭のつるを、ついに切り落とす。この圧迫感ともおさらばだ。そして、視界が開ける。そこは、崖だった。私は、崖の上から身を投げた形で止まっていた。そう、ここは斜面の終わりの、その先だ。
思い出す。危険だという草原に入り、斜面に足を取られて転落する私。滑落中に岩に頭を打つ。そして、斜面の終わりで、つる性の植物が私を助けてくれた。全てを忘れていた私は、その植物の束縛を解き放った。
もはや、腰だけで、全体重を支える植物。
いや、支えることの出来なかった、植物の触手。
束縛のつる 高黄森哉 @kamikawa2001
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